一戸建てを建てるとき、水害をはじめとする災害に遭遇しないため、ハザードマップを参考にする方は多いでしょう。
一方で「ハザードマップを気にしすぎても意味ない」と、ハザードマップを見ずに土地や建物を契約する人もいます。
ハザードマップを気にするべきか、気にせずに土地を決めるべきか、どちらが正しいのでしょうか。
本記事では、はじめに「ハザードマップを気にしすぎても無意味」と指摘される理由を紹介。
さらにハザードマップとはそもそもどういう目的で作られたのか、そしてどのように活用すればよいのか解説します。
記事の終わりには、ハザードマップの浸水エリアに入っている家を購入する場合や、浸水エリア内の土地に注文住宅を建てる場合に注意するべき点についても解説します。
ハザードマップを気にしすぎても無意味?
自治体が災害の歴史などをひもとき作成するハザードマップ。
どうして「気にしすぎても無意味」と言われるのでしょうか。主な理由は以下の3つです。
● 希望するエリア全域が浸水エリアだから意味がない
● 1,000年に1度しか発生しない大雨を想定しているから意味がない
● ハザードマップの浸水エリア外で被害に遭うケースもある
希望するエリア全域が浸水エリアだから意味がない
ハザードマップを確認すると分かりますが、浸水エリアは非常に広い範囲が含まれます。
自治体によっては、居住可能な地域ほぼ全域が浸水エリアに含まれているケースもあり、「ハザードマップを見ても見なくても変わらない」と考える人がいても不思議ではありません。
しかし、ハザードマップの浸水エリアは50cm・3m・5mなどと浸水予想深さごとに色分けされています。
浸水深によって行うべき対策が変わるため、居住する予定の地域全体が浸水エリアに含まれていた場合でも、ハザードマップを確認するべきといえるでしょう。
1,000年に1度しか発生しない大雨を想定しているから意味がない
ハザードマップのことを調べると「1,000分の1確率」という言葉を目にします。
この数値を見て「1,000年に1回しか降らない雨のために、家を建てる場所が制限されるなんて…」と考える人もいるでしょう。
しかし、「1,000分の1確率」とは、1,000年に1回しか降らないのではなく、1年間の間に発生する確率が1,000分の1、ということを示しています。
低い確率ではありますが、毎年ハザードマップの浸水エリアまで届く洪水が発生する確率があるので、常に洪水をはじめとする災害に遭遇する可能性があるという認識が必要です。
ハザードマップの浸水エリア外で被害に遭うケースもある
実は、過去の洪水被害を確認すると、ハザードマップの浸水エリアの外であるにも関わらず浸水被害を受けた事例が散見されます。
たとえば、2023年9月に福島県いわき市で発生した洪水では、ハザードマップの浸水エリア外でありながら被害を受けた地域がありました。
ハザードマップが設定されている地域で浸水エリアを意識しても洪水被害に遭うなら、ハザードマップを気にしても意味がないと思うのも無理はありません。
参考記事:福島民報 福島県いわきの宮川周辺 大半は浸水想定区域外
しかしハザードマップを見ることで浸水する可能性が高いエリアを視覚的に把握できる点は強みといえます。
そもそもハザードマップは「発生する確率のあるエリア」を示しているだけで、想定を超える雨が降ったり、連続して雨が降って地中の水分量が多かったり、想定外のことが起こることもあるでしょう。
ハザードマップの浸水エリアは参考にしながら、浸水リスクを避けたいならより高台に、便利な生活を送りたいなら街の方にと、自分なりに災害との付き合い方を考えることが大切です。
こうした理由で「気にしすぎても意味ない」と指摘されるハザードマップ。
一方で水害の歴史や気象データの解析によって作られるハザードマップには一定の信頼が置けます。
意味がないと遠ざけず、信頼しすぎず、中身を知った上で適切に付き合っていくことが大切です。
ハザードマップの本当の意味とは
適切な距離感をつかむためには、ハザードマップとはそもそも何なのか、どのような地図・利用法なのかを知る必要があります。
ハザードマップの存在意義や実例を確認してみましょう。
そもそもハザードマップって何?どんな地図なの?
ハザードマップ作成の主役を担う国土交通省国土地理院によると、ハザードマップは以下のような地図と説明されています。
「自然災害による被害の軽減や防災対策に使用する目的で、被災想定区域や避難場所・避難経路などの防災関係施設の位置などを表示した地図」
つまり、災害が発生したとき、危険な箇所や災害時の避難場所を分かりやすくまとめた地図と言えるでしょう。
参考記事:国土交通省国土地理院 ハザードマップ
的確な避難行動を促す目的がある
災害発生時に危険な箇所が分かればその場から離れることができ、避難場所が分かれば最短ルートを利用して避難できます。
災害に遭遇する可能性がある場所が分かれば、こうして人や財産の被害を最小限に抑えられます。
たとえば洪水を受けない家づくりを行いたい場合、ハザードマップがあれば被災する可能性のあるエリアを一目で確認できますが、なければどこに家を建てるべきか判断がつきません。
浸水エリア内に家を建てる場合でも、後ほど説明する様々な対策を立てることができ、被災後の避難も安全・迅速に行えるようになります。
実は複数あるハザードマップ
一般的に河川の氾濫に備える洪水ハザードマップが注目されますが、実はほかにも複数の種類のハザードマップがあります。
たとえば、四日市市では以下の種類のハザードマップが公表されています。
● 津波避難マップ
● 洪水ハザードマップ
● 高潮浸水想定区域図
● 内水浸水想定区域図
● 土砂災害ハザードマップ
● ため池ハザードマップ
● 南海トラフ地震等における震度予測、液状化分布図
参考記事:四日市市防災情報 各種ハザードマップ
洪水の発生原因となる河川が近くにない場合でも、土砂災害やため池決壊といった被害を受ける可能性があるため、それぞれのハザードマップを一度は確認することをおすすめします。
四日市市のハザードマップの事例を紹介
ここでハザードマップとはどのような形式の地図なのか、四日市市が独自に作成しているハザードマップを事例に確認してみましょう。
四日市市津波避難マップ
四日市市の津波避難マップでは、南海トラフ地震が発生して、最大震度7の揺れと最大5mの津波が来襲する想定で作成されています。
沿岸部の地図が掲載され、浸水深の深さごとに地域がエリア分けされるとともに、津波に対してどこまで避難すれば安心できるのか、避難目標ラインが描かれています。
浸水深以外の紙面では、避難する際の具体的な行動やポイント、過去の地震の歴史からどうして近年南海トラフ地震が注目されているのか、といった話題も掲載されている点もポイントです。
四日市市土砂災害ハザードマップ
土砂災害ハザードマップでは、大雨や地震などに起因して土石流が発生する可能性のある場所が地図に記載されています。
土砂災害と聞くと規模の大きな斜面で発生するケースを想像しがちですが、実は小さな斜面も対象となるケースも多いので、居住する可能性がある地区のハザードマップを確認することをおすすめします。
鈴鹿川水系(鈴鹿川、鈴鹿川派川、内部川)洪水ハザードマップ
引用:四日市市 鈴鹿川水系(鈴鹿川、鈴鹿川派川、内部川)洪水ハザードマップ
最も利用されることの多いハザードマップは、地域の洪水について記載されたマップです。
鈴鹿川水系(鈴鹿川、鈴鹿川派川、内部川)のハザードマップでは、鈴鹿川下流部において浸水被害が発生したケースの浸水エリアが表示されています。
浸水エリアは色分けされていて、濃い赤色になるにつれて浸水深が高くなるよう設定されています。
ハザードマップを確認すると、大部分が浸水する沿岸部でも、浸水しない、または浸水しても50cm程度に収まるエリアがあります。
利便性の高い沿岸部で浸水のリスクを減らすためには、こうしたエリアを選択することが大切です。
また、浸水深の高いエリアでも市民センターなどを中心に避難所として利用できる2・3階を持つ建物が紹介されています。
こうした情報を確認することも、命や財産を守ることにつながります。
四日市市ため池ハザードマップ
河川が近くにない場合でも、ため池がある場合、ハザードマップの被災範囲に入っている可能性があります。
主に農業用の水が蓄えられるため池は、古いものでは100年以上が経過し老朽化が進行しているものもあります。
大雨や地震で決壊して下流の家屋に被害をもたらすかもしれません。
四日市市では、地域の25のため池についてハザードマップを作成。決壊後、何分でどの位置まで水が押し寄せるかが描かれています。
たとえば平谷ため池では、1分~20分後までの浸水予想区域が記載されています。
このように、各種災害ごとにハザードマップは作成され、災害が発生したときに被災する可能性のあるエリアを明示しています。
どのエリアが被害を受ける可能性があるのか把握することで、家を建てる場所を適切に検討できるようになるのです。
後悔しないハザードマップの活用法
ハザードマップは災害が発生した場合に被害がおよぶ可能性がある場所や、避難するべき場所を示すマップです。
マップの存在や作られた理由を知っていても、実際に活用しなければ「あのとき、ハザードマップを活用しておけばよかった」と後悔することになります。
では、どのように活用すれば、命や財産を守ることができるのでしょうか。
ここからは主に利用されている、洪水ハザードマップに絞って解説します。
(1)自分で読む
1つ目の活用方法は、自分で読み込むことです。
ハザードマップには、台風や大雨が発生したとき浸水する可能性があるエリアや安全な避難場所が描かれています。
自分が生活する圏内のこうした情報を把握することで、災害が発生したときにどういった行動を取るべきなのか方針を決められるでしょう。
災害時にその場所に留まるべきなのか、高台に避難するべきなのか、適切な行動を選択して自身の命を守ることができます。
引用:四日市市 鈴鹿川水系(鈴鹿川、鈴鹿川派川、内部川)洪水ハザードマップ
また、鈴鹿川水系洪水ハザードマップには、地図面のほかに情報面が掲載されています。
情報面には、情報収集の方法や自宅で被災した場合の行動の心得、避難する際に危険のある箇所などについても記載されています。
ハザードマップを読み込んで、被災時の対処法を学んでおくことも大切です。
(2)家族で読む
2つ目の活用方法は、家族で読むことです。
ご家族がいる家庭では、普段はお父さんお母さん子どもたちと、家族がそれぞれ異なる行動を取っています。
通勤・通学や買い物に利用するルートもそれぞれ異なるため、被災時の危険性も変化します。
家族でひとつのハザードマップを確認することで、お互いの気づいていない危険性を教え合うことができるでしょう。
また、被災時に起こる問題のひとつは、家族間で連絡が取れないという事態です。
携帯電話の基地局が被災したり、多くの人が通話を試みることで回線がパンクし、携帯電話・スマートフォンがつながりにくくなるのです。
こうした事態に陥った場合に備えて、被災した場合に集合する場所(自宅・避難所など)を家族でひとつ決めておきましょう。
(3)職場・学校で読む
3つ目の方法は、職場・学校で読むことです。
平日の多くの時間は家族は自宅ではなく、職場や学校で過ごすことが多いでしょう。
多くの時間を過ごす場所でこそ、水害を始めとする災害への備えを行う必要があります。
一方で中小企業庁の資料によると、「自社の地域のハザードマップを見たことがある」と答えた事業者の数は37.3%に留まり、多くはハザードマップを確認したことがないと回答しています。
また、被災した企業に対して行った調査では、被災によって多いところでは1億円を超える物的損失を被っている実態も見られます。
物だけではなく、人命が失われる恐れもあるため、ハザードマップは職場や学校で共有する意識が大切になります。
家を買う・建てるときに利用する
ハザードマップは、家を買う・建てるといった目的にも利用できます。
建売住宅や中古住宅を購入する場合には、ハザードマップで浸水する可能性があるエリアの中に入っているのか確認することで、水害に遭遇する危険性を減らせるでしょう。
注文住宅を建てるときには、土地選びの段階でハザードマップの浸水エリア想定が役立ちます。
浸水エリアに入っていない土地を探す目的でも利用できますし、入っていた場合でも浸水想定深が分かれば被害を最小限に抑える設計の工夫を講じることができます。
重ねるハザードマップも活用しよう
引用:国土地理院 スマホで簡単確認! 身近な河川どれくらい浸水するの?
一般的には紙の形式で市役所などから配布されるハザードマップですが、パソコンやスマートフォンを利用して、より気軽に利用できる「重ねるハザードマップ」というサービスも運用されています。
重ねるハザードマップは、以下の5つの災害情報を地図上に重ねて表示できるサービスです。
● 洪水
● 土砂災害
● 高潮
● 津波
● 道路防災情報
複数の種類の災害情報を重ねて確認できるので、一戸建てを建てる予定のエリアを中心に被災の可能性の有無を一度に確かめられます。
また、紙のハザードマップでは、市区町村の境目など確認しづらい箇所がありましたが、重ねるハザードマップであれば、境目も継ぎ目なしに災害の情報を確認できます。
紙のハザードマップに記載される被災時の動き方などは掲載されていないので、紙のハザードマップと重ねるハザードマップとを上手に使い分けましょう。
このように、様々な場面で活用できるハザードマップ。
特に洪水ハザードマップを利用する場合は「浸水エリア」の見方が重要になります。
浸水エリアの理解と注意点
浸水エリアは、洪水が発生したときに水に浸かる可能性のある範囲です。
同じ浸水エリア内でも、浸水深が異なる点に注意する必要があります。
ハザードマップの浸水深の目安は?
洪水ハザードマップでは、浸水深を以下の6つの深さに色分けしています。
● 20m~
● 10~20m
● 5.0~10m
● 3.0~5.0m
● 0.5~3.0m
● 0.0~0.5m
このうち低い方から、0.0~0.5mは大人の膝までつかる程度の浸水深で、同時に多くの一戸建ての床下浸水が発生する可能性のある深さでもあります。
続いて0.5~3.0mは1階天井まで浸水する程度の浸水深となっていて、洪水が発生した場合には床上浸水する可能性がある高さといえます。
さらに3.0~5.0mは2階部分まで浸水する可能性があるエリアに指定されています。
このように、同じ浸水エリアであっても浸水深は異なっており、土地探しや注文住宅の設計段階でどの程度の浸水深になるのかを把握する必要があるのです。
ハザードマップはあくまで目安と考える
気をつけておきたい点は、ハザードマップはあくまで目安であるということです。
降雨の状況や建物周囲の地形など、諸条件によって予想されている浸水深に満たない場合もあれば、予想浸水深を超える可能性もあります。
予想浸水深が0.5mまでのエリアに住む場合でも、0.5mを超える洪水が発生する可能性はあるので、これから解説する「浸水エリア内に家を買う・建てるときの注意点」の中で取れる対策を講じておきましょう。
ハザードマップは最新のものを利用する
引用:ソニー損害保険株式会社 全国のハザードマップ改訂情報をまとめた最新レポート
浸水エリアに関して、もうひとつ注意したい点は最新のハザードマップを参照することです。
毎年激しさを増す降雨に対応するため、各自治体は最新の気象や地域の条件の変化に合わせてハザードマップの更新を行っています。
ソニー損害保険株式会社が行った調査によると、2021年4月から2023年6月までの27か月の間に、全国の自治体のうち111の自治体でハザードマップの改訂が行われているということです。
古いハザードマップでは浸水エリアに入っていなかった場所も、最新のハザードマップでは浸水エリアに指定されている可能性もあります。
自宅にあるハザードマップが最新の情報を反映しているか、自治体の災害担当課に問い合わせてみましょう。
ハザードマップの浸水エリアの家を買うときの注意点
ここからは具体的に、ハザードマップの浸水エリア内に家を買う・建てる場合の注意点を紹介します。
まずは中古住宅や建売住宅を買う場合に気にするべき5つの注意点についてです。
(1)近隣の人に水害の危険性や対処法について聞く
購入する住宅の周辺住民と会話する機会があれば、水害の危険性や対処法について話を聞いてみましょう。
ハザードマップは対象とするエリア全体の浸水リスクを広く確認するためのツールで、個別の土地ごとの地形や建物の情報までを反映している訳ではありません。
過去に水害があった場合は、どこまで水が到達したのか、地域に住んでいる人はどのような対処を行っているのか、確認できれば住宅を購入したあとの生活を具体的に想像し、被災した場合の対処法を具体的に考えられるでしょう。
(2)住宅周辺の土地の浸水区域も把握しておく
購入を予定している住宅だけではなく、周辺の土地の浸水エリアを把握しておくことも大切です。
周辺より高い位置に家があり浸水被害を避けられた場合でも、職場や学校、日用品を購入する店舗と行き来する間に被害に遭う可能性もあります。
購入予定の家だけでなく、ハザードマップでは周辺の浸水状況も確認しましょう。
(3)浸水時に避難所に逃げられるよう計画を立てておく
購入を検討している住宅が浸水エリア内に含まれている場合は、洪水で浸水する場合に避難所に逃げられる体制を作ることが大切です。
避難ルートを確保するとともに、洪水が予想される場合に即座に逃げ出せる態勢を作っておけば、命と財産を守ることができます。
特に家族に高齢者や幼児、ペットがいる場合は、避難所に必要な物資が準備されていないケースも多く、特に事前の準備が大切になるでしょう。
(4)生活再建できるように保険に加入しておく
浸水エリア内にある住宅を購入する場合、対策を施しても浸水するリスクをゼロにはできません。
このため万が一被災した場合に、生活が再建できるように対策を講じることも必要です。
具体的には火災保険で水災の特約をつけて、被災後に生活を再建できるよう備えておくことです。
住宅を購入したあとに被災すると、すでに契約している住宅ローンに加えて被災後のリフォーム費用も支払うことになり、経済的に苦しい状況になる可能性があります。
浸水エリア内の住宅を購入する場合は、洪水時だけでなく、洪水に遭ったあとのことも考える必要があります。
(5)建物に浸水対策が施されているか確認する
浸水エリア内の住宅を購入する場合は、中古住宅の場合は家主が、建売住宅の場合はハウスメーカーが浸水対策を施している可能性があります。
十分な対策が施されている場合、浸水エリア内であっても浸水被害を避けられる可能性があるので、ハザードマップの浸水エリア内に入っていることを確認したうえで、どんな対策を講じているのか確認してみましょう。
このように、ハザードマップの浸水エリア内にある中古住宅や建売住宅を購入する場合には様々な注意点を確認する必要があります。
ただし、家が完成している以上は対策の多くは被害を抑えるためのソフト対策(工事を伴わない対策)に限られます。
もっと具体的に浸水被害を減らすためには、これから紹介する、浸水エリア内に家を建てるときの注意点を参考にしてみてください。
ハザードマップの浸水エリアに家を建てるときの注意点
ハザードマップの浸水エリア内に入っている土地を購入して注文住宅を建てる場合に、気をつけておきたい点を紹介します。
浸水被害を避ける方法のほか、被害を受けたあと生活を立て直すための方法がある点にも注目です。
(1)可能な限り周囲の土地より標高が高い土地を選択する
浸水エリアの中に家を建てる場合、少しでも標高の高い土地を選択しましょう。
万が一敷地が浸水した場合に、道路と同じ高さに建物がある場合と、50cm高い位置に建物がある場合とでは被害の状況が異なります。
重ねるハザードマップでは、該当する箇所の標高を表示する機能もあるので、建築を予定している地域の中で標高の高い場所・低い場所を確認して土地を検討してみましょう。
(2)浸水深によっては高基礎を検討する
浸水リスクを低減したい場合は、基礎の高さを高くする高基礎を選択する手もあります。
基礎を高くすることで、住宅全体の高さを確保できるとともに、床下浸水のリスクを低減できる効果も期待できます。
ただし、基礎高を上げると建築費用が高額になる点には注意が必要です。
サティスホームでは…
サティスホームの基礎高は、標準で520mmです!詳しくは「サティスホームのこだわりポイント」(見学会や資料請求でお渡ししています)でご確認ください。
(3)1階は駐車場と玄関にして被害を最小限に抑える
1階部分を丸々ガレージと玄関にすることでも、洪水による被害を最小限に抑えられます。
ガレージと玄関であれば、万が一浸水した場合でも被害を受ける設備が少なくなり、水が引いたあとの生活の復旧が容易になります。
2階以上にリビングや寝室があれば、避難所に逃げ遅れた場合でも被災する可能性を抑えることができ、人命や財産を守れる可能性も高まります。
(4)基礎断熱を選択して気密パッキンを採用する
住宅の性能の中で大事なもののひとつは断熱性です。
断熱には、床下で断熱を行う一般的な断熱と、建物の基礎部分で断熱を行う基礎断熱とがあります。
基礎断熱を選択すると、基礎と建物の間に気密パッキンと呼ばれる部材を使用することになります。
気密パッキンを使用すれば、浸水した場合でも住宅の基礎に水が流れ込む可能性を低減できます。
ハウスメーカーの工法によっては選択できないケースもありますが、方法のひとつとして知っておきましょう。
サティスホームでは…
サティスホームでは、オプションで基礎断熱・気密パッキンも使用できます。標準仕様については、「サティスホームのこだわりポイント」「サティスホームの標準仕様」(見学会や資料請求でお渡ししています)でご確認ください。
(5)基礎が浸水した場合のための水抜き口を設ける
水害が発生したあと、困る事柄のひとつは基礎に溜まった泥水や砂の除去です。
水分がある限り、建物の木材はカビ・シロアリ被害を受ける可能性にさらされ続けます。
早期に水や砂を排除して床下を乾燥させる必要があるので、開閉可能な水抜き穴を作ることで、床下まで浸水しても水を早く排出できるでしょう。
(6)風が通り抜けるように床下点検口を2箇所取り付ける
水抜き穴と同様に確保したいのは複数の床下点検口です。
通常は1つの住まいに1つの床下点検口が設けられますが、2つ設けることで床下の乾燥を促進できます。
普段気にすることのない設備ですが、水害の被害を受けた場合に加えて、シロアリ防除や住まいの状態確認の際にも便利に利用できるアイデアです。
(7)建物を塀で取り囲んで防水壁を設けておく
近年はオープン外構が主流ですが、あえて壁を立ち上げたクローズド外構を選択する手もあります。
クローズド外構は水が侵入するルートを限定できるので、玄関のある方だけ開放したうえで既製品の防水壁を利用して水の侵入を防ぎましょう。
浸水エリアに家を建てるなら、外構計画も含めた対策を講じることが大切です。
(8)電気・給水設備を一段高い位置に配置する
浸水エリア内に入っている場合は、エアコンの室外機やエコキュートの貯湯タンクといった設備を一段高い位置に配置することを検討してみましょう。
設備類は水に浸かってしまうと機能不全になるケースも多く、何らかの対策が必要になります。
設置する場所のコンクリートを高めにしたり、専用の架台を設けるといった対策で高さを稼げるでしょう。
注文住宅を建てるときは、建物から外構まで自由に考えて設計に反映できます。
浸水エリア内の土地を購入する場合は、設計の力で水害に備えましょう。
まとめ:ハザードマップは気にしすぎなくても良い?
引用:国土地理院 ハザードマップポータルサイトのパンフレット
「ハザードマップは気にしすぎなくても良い?」という疑問について、そもそもハザードマップとはどのような機能を持つツールなのか、どういった活用方法が考えられるのか、といった視点から解説しました。
ハザードマップは低確率の大雨が降った場合に浸水する可能性のエリアを示したもので、本当に被害に遭うのかは分からない不確実なものです。
一方で、ゲリラ豪雨という言葉があるように、大雨による災害はいつどこで発生するのか分かりません。
過去の統計や言い伝えなどの経験則から想定される浸水エリアを把握しておくことや、安全な避難場所を知っておくことは、命や財産を守るために非常に重要なことといえるでしょう。
特に、一戸建ての住まいの購入を検討している人にとっては、自宅の被災を防ぐ、または自宅が被災した場合の被害を最小限に抑えるために、必ず確認しておくべきツールともいえます。
重ねるハザードマップなど、パソコンやスマートフォンがあれば簡単にハザードマップの情報を利用できるツールもあるので、災害で被災する事態を避けたいと思う人は、ハザードマップで自宅および周囲の浸水エリアを確認するところから始めてみましょう。
サティスホーム本社営業部長:小林大将
2級建築士と宅地建物取引士の資格を取得後、サティスホームで現場監督を10年経験。携わらせて頂いたお客様は200棟以上。その後、本社営業部長としてお客様の家づくりをお手伝いさせて頂いてます。