これから注文住宅を建築する方は土地探しから始まります。土地にはさまざまありますが、今回ご紹介するのは「分譲地」です。分譲地とは不動産会社や分譲会社がまとめて購入した土地を複数の区画に分けて、販売している土地のことです。一方で施工会社の指定などもあるため好きな会社で建築することができないなどのデメリットがあります。他にも多くのデメリットがあるため、メリットと重ねて解説するのとともに、宅地との違いや注意点について紹介します。これからマイホームを建築するための土地探しを始める方はぜひ参考にしてください。
分譲地のデメリットとは?
分譲地を購入するデメリットはどのような点が挙げられるのでしょうか。ここでは4つのデメリットを紹介します。
建築会社が決められていることが多い
分譲地を購入した場合、家を建築する会社は指定されていることが多いです。いわゆる「建築条件付き」の土地を指します。建築条件付きとは、「土地を購入する代わりに建物を建築する会社は土地所有者が指定する」という内容のものです。分譲地や区画整理地などは建築会社が土地を保有していることが多く、建築条件付きの土地が多くあります。すなわち買主は好きな建築会社で施工できなくなる可能性が高いデメリットがあります。
仲介する不動産会社が選べない
建築条件付きと同様に、土地を仲介してくれる不動産会社が指定されます。大きなデメリットではありませんが、知人に依頼した人や仲介手数料が安い業者へ依頼することができます。仲介手数料は「土地代金の3%+ 6万円」に消費税をかけた値です。しかし先ほどの計算式は国交省が定めた上限額であり、不動産会社によっては安くしてくれる業者も存在します。しかし分譲地は人気が高いため、仲介手数料を安くしてくれる不動産会社はほとんどありません。結果高い手数料を支払うことにもなるデメリットがあります。
建築費が高いことも
分譲地は土地代を安く見せている反面建築費が高いことが多いです。分譲地は大きな土地を購入できるほどの資金力を持ち合わせている大手企業や中堅ハウスメーカーが多い傾向にあります。そのため工務店などと比較すると建築費が高くなりがちです。どれくらい費用が異なるか分からない方に向けて、一般的な建築費の相場を比較すると1坪当たりの工事費は以下の通りとなります。
工務店 | 中堅メーカー | 大手ハウスメーカー |
40万円~60万円前後 | 55万円~75万円前後 | 70万円~100万円前後 |
比較してわかる通り、大手ハウスメーカーなどで建築すると建築費が割高となってしまう可能性も高いです。土地が安くても建物代金が高いことも多いためトータルの費用を考慮する必要があります。
郊外エリアが多い
分譲する土地はある程度まとまった広さが求められるため、市内の中心地より郊外で販売されることが多いです。そのため公共交通機関へのアクセスが悪い場合が考えられます。車社会の地域であれば問題ありませんが、都心部などではバスの場所などが重要となります。通勤・通学上不便がないかをチェックしたうえで購入を検討する必要があります。
分譲地のデメリットとメリットを比較
一方、分譲地にはメリットもあります。ここでは3つ紹介します。
きれいな住宅街
分譲地は土地の区画や道路などが整備されるため、きれいな街並みとなります。建築される住宅もすべて新しく、外灯なども全て新設されます。街並み全体がきれいな状態であると住み心地もよくなり、快適な住環境にもなるでしょう。
将来的に価値が上がることもある
分譲地をきっかけに周辺に住宅街ができると、近隣に区画整理事業が開始され商業施設やスーパーなどが開業する場合があります。区画整理などが近隣で開始され店舗などができると住宅なども多く建築されることから、人気の高いエリアとなり地価が上昇する可能性が高まります。そのため将来的に売却するとなった際、高い価格で売れるケースも多いです。
水道などのインフラが整備されている
分譲地は前面道路の水道やガスなどが整備されているため、最小限の付帯工事費用で済ませることが可能です。前面道路に水道管が埋設されていない場合、本管から引き込み工事をしなければいけず、距離が長くなるほど工事費が高額となります。場合によっては数百万円などの工事費にもなりかねませんが、分譲地であれば付帯工事の費用を抑えることが可能です。
分譲地と宅地のメリット・デメリットの違い
分譲地のメリットを紹介しましたが、通常の宅地とどのような違いがあるのでしょうか。ここでは分譲地と宅地の違いについてと、宅地のメリット・デメリットを紹介します。
宅地と分譲地の違い
宅地と分譲地の違いについて気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。結論から申し上げると分譲地は宅地の一種です。宅地とは登記簿謄本に記録される「地目」の一つです。登記簿謄本とは土地の地目をはじめ、所有者や面積などが明記された書類であり、法務局で確認できます。地目は以下の23種類に分かれています。
地目 | 概要 |
田 | 耕作に供する土地で用水を利用して耕作する土地 |
畑 | 耕作に供する土地で用水を利用しないで耕作する土地 |
宅地 | 建物の敷地及びその維持若しくは効用を果たすために必要な土地 |
学校用地 | 校舎、附属施設の敷地及び運動場 |
鉄道用地 | 鉄道の駅舎、附属施設及び路線の敷地 |
塩田 | 海水を引き入れて塩を採取する土地 |
鉱泉地 | 鉱泉(温泉を含む)の湧出口及びその維持に必要な土地 |
池沼 | かんがい用水でない水の貯留地 |
山林 | 耕作の方法によらないで竹木の生育する土地 |
牧場 | 家畜を放牧する土地 |
原野 | 耕作の方法によらないで雑草、かん木類の生育する土地 |
墓地 | 人の遺体又は遺骨を埋葬する土地。墓地、埋葬等に関する法律(昭和23年5月31日法律第48号) |
境内地 | 境内に属する土地であって、宗教法人法(昭和26年法律第126号)第3条第2号及び第3号に掲げる土地 (宗教法人の所有に属しないものを含む) |
運河用地 | 運河法(大正2年法律第16号)第12条第1項第1号又は第2号に掲げる土地 |
水道用地 | 専ら給水の目的で敷設する水道の水源地、貯水池、ろ水場又は水道線路に要する土地 |
用悪水路 | かんがい用又は悪水はいせつ用の水路 |
ため池 | 耕地かんがい用の用水貯留地 |
堤 | 防水のために築造した堤防 |
井溝 | 田畝又は村落の間にある通水路 |
保安林 | 森林法(昭和26年法律第249号)に基づき農林水産大臣が保安林として指定した土地 |
公衆用道路 | 一般交通の用に供する道路(道路法(昭和27年法律第180号)による道路であるかどうかを問わない) |
公園 | 公衆の遊楽のために供する土地 |
雑種地 | 以上のいずれにも該当しない土地 |
上記を見てお分かりになると思いますが、「分譲地」という地目はありません。宅地は「建物の敷地及びその維持若しくは効用を果たすために必要な土地」でありますが、簡潔に言うと建物が建築できる土地を指します。分譲地も建物が建築できる土地であるため、宅地に該当するということです。実際に分譲地の登記簿謄本を確認すると、地目が「宅地」となっています。とはいえ、ここでは一般的な土地を宅地としてそれぞれの違いについて紹介します。宅地のメリット・デメリットを次の項で紹介するので、分譲地と比較してみてください。
宅地のメリット①:好みの場所で建築できる
分譲地は分譲会社や不動産会社が造成した場所となりますが、宅地は好きな場所の土地を購入して建築できます。お客様の中には土地選びの際、場所を第一優先にしている方もいらっしゃるでしょう。しかし分譲地は分譲された場所と限られています。建築したいエリアで100%分譲されるという可能性は低く、なおかつ郊外などが選ばれることが多いです。一方宅地であれば気に入った場所に建築できます。もちろん売り物件として土地が出てくることが条件ですが好きな場所に建築できるメリットがあります。
宅地のメリット②:施工会社が選べる
建築条件付きの分譲地と異なり、宅地は好きな施工会社で建築することが可能です。施工会社が選べる点は大きなメリット。コストを抑えて建築したり、好きなデザイン、間取りを選ぶことが可能です。特に注文住宅の場合、一から間取りを検討するため、理想のマイホームを手に入れることが可能です。さらに工務店などで建築すれば、分譲地より安くマイホームを取得することもできるでしょう。
宅地のメリット③:格安な土地がある
分譲地はある程度相場価格で売り出しますが、宅地は土地によって格安で手に入ることもあります。一般の方は馴染みがないかもしれませんが、不動産会社などは競売物件などを購入して売りに出したります。競売とは過去に差し押さえされた土地などを指します。決して事故物件などではないものの、格安で販売されることが多いです。競売物件は一般ユーザーが購入するのが難しいものの、不動産会社が安く取得し安く販売することも多いです。分譲地は競売物件になることはほとんどありませんが、宅地であれば取得することも可能でしょう。
宅地のデメリット①:インフラが整備されていないことも
宅地は場所によってインフラが整備されていないこともあります。分譲地はほぼ100%の確率でインフラ整備されておりますが、宅地の場合はケースバイケースです。住宅地などであれば問題ないケースが多いですが、郊外の人里離れた場所などでは前面道路に水道管が埋設されていないこともあります。その場合は高額な費用を支払って工事しなければいけないため、結果分譲地の方がトータルの費用が安かったというケースもあるでしょう。
宅地のデメリット②:購入してから別途費用がかかることも
水道の工事だけでなく、造成工事など購入してから別途かかる費用もあるケースが宅地には考えられます。崖の補修工事や擁壁の工事など土地の状態によっては大規模な工事が必要となることもあります。高額な費用を支払うだけなく、工期も長くなりマイホームが完成するまで時間がかかってしまうデメリットもあります。
宅地のデメリット③:境界が不明確な土地もある
宅地の場合、境界が不明確な土地も多いため注意しなければいけません。境界が不明確であると、隣地の方と協議して「境界確定」を行わなければいけません。不明確なままでは建物を配置できず、建築することができないためです。境界は境界杭が隣地との間にありますが、年数が計画するにつれて紛失していることも多々あります。そのため土地家屋調査士や司法書士などの専門家に依頼し、隣地の方と境界確定を行います。しかし隣地の方と揉めることもあり、最悪の場合、裁判まで発展してしまうこともあります。時間と労力を費やしてしまうため、購入前に境界を確認しておきましょう。
分譲地を選ぶ際の注意点
分譲地を購入する際は以下の点に注意しましょう。
建築会社の見積もりを取ること
分譲地を購入するということは、建築会社が指定されていることが多いです。しかし建築会社によっては高額な建築費となり、予算オーバーすることも考えられるため見積もりを確認してから購入しましょう。土地代は安いものの建築費が高いということは、分譲地でよくある例です。高額な借り入れをして建築してしまうと、借入返済に圧迫されて生活にも支障をきたす可能性が高いため注意しましょう。
インフラ整備代が土地の価格に含まれているか
近年では減りましたが、インフラ整備代が別途請求されるケースもありました。その名残で一部の地域などでは土地の購入代金と別にしていることもあります。インフラ整備代は場所によって異なるものの、数十万円〜数百万円にもなります。「土地代金とは別なので支払ってください」と言われても困る方も多いのではないでしょうか。そのため事前に分譲会社へ確認を取っておきましょう。
早い者勝ちであること
土地の購入は早い者勝ちです。特に分譲地は人気が高いため、多くの方が購入を検討しています。そのため購入するか悩んでいるうちに完売してしまったという事例も少なくありません。分譲地を購入する際は即決が求められます。とはいえどのように即決するのか分からない方も多いでしょう。土地を購入する際は「買付証明書」を不動産会社を経由して売主へ提出します。買付証明書とは売主に対して希望価格や手付金額、契約希望日などを明記した書類であり、「購入したい」という意思表示のようなものです。買付証明書を一番最初に提出すれば、売主と交渉権を得られます。買付証明書の内容に売主が同意すれば、購入することが可能となるため、即座に提出するようにしましょう。
家族会議で決めておく
前項でもお伝えした通り、買付証明書を提出すれば交渉権が得られます。しかし一生その場所に住む可能性も高く、即決できない方も多いです。そのため家族会議を行い、「このエリアに分譲地が出たら購入しよう」「土地の価格帯を事前に調べ、建築費も高額でなければ購入しよう」と決めておくことが大切です。分譲地が売り物件としてから悩み始めると先に買われてしまう可能性もあるため、事前に決めておくようにしましょう。
分譲地のデメリットまとめ
分譲地はきれいな町に住宅を建築できる一方で、建築会社が指定されている場合が多いです。特に大手の企業や中堅メーカーとなると、高額な建築費にもなりかねません。分譲地で建築する際はしっかり建築会社の見積もりや別途費用を確認することが重要です。結果として一般的な宅地の方がコストを抑えられたというケースも少なくありません。必ずトータルの費用を出してもらい、総合的に問題ないか確認してから購入しましょう。
サティスホーム本社営業部長:小林大将
2級建築士と宅地建物取引士の資格を取得後、サティスホームで現場監督を10年経験。携わらせて頂いたお客様は200棟以上。その後、本社営業部長としてお客様の家づくりをお手伝いさせて頂いてます。