注文住宅の着工前は工事の安全を祈願するために地鎮祭を執り行うケースが多いです。地鎮祭は建築業界では非常に重要視されている式典です。しかし地鎮祭は費用が発生するため「やらなくてもいいのかな?」と疑問に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回、注文住宅の新築着工時に行う地鎮祭の目的や費用、マナーなどを紹介します。最後には地鎮祭を行わなくて良いのかという疑問に関するアンサーも用意していますので、これから注文住宅を建築する方は是非参考にしてください。
注文住宅新築時に行う地鎮祭とは?
そもそも地鎮祭って何だろう?と疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。建築業界に携わりのない方は聞きなれない言葉かもしれません。しかし住宅やアパート、マンションの建築前にはほとんどの建築会社が執り行う式典です。ここでは地鎮祭の目的や内容を紹介します。
地鎮祭の目的
地鎮祭は工事が無事に終わることを祈るだけでなく工事関係者(施主・建築会社)の安全と繁栄を祈る式典です。地鎮祭の歴史は古く、今から遡ること1400年前の飛鳥時代から執り行われていた式典と記録もあります。当時から万物には八百万の神が宿るという考えがあり、土地にも神様が宿るという考えでした。「土=神」ということもあり、人の都合で建物を建築するわけであるため、「神様につかわせてください」というお願いを込めて地鎮祭を行う流れが現代でも引き継がれています。また勝手に工事すると神様も怒るとされているため、「工事させて頂きます」「怒らないでください」などの意味合いもあるとされています。
そのため地鎮祭を行う目的としては神様へ土地の使用許可をもらい、無事注文住宅が完成することをお祈りする式典と覚えておきましょう。
地鎮祭を行うタイミング・日程
地鎮祭を行うタイミングは工事の着手前が一般的です。ただし地鎮祭を執り行う土地の状況が、草が生い茂っていたり人が立っていられないほど荒れた土地である場合は、先に造成工事を行い整地してから本体着工の前に行うケースもあります。地鎮祭を執り行う際はテントを張って祭壇を設置して行うため、土地の状況が影響してくるということです。
また地鎮祭を行う日程は六曜の吉日である「大安、友引、先勝」の午前中に行うのがよいとされています。基本的には大安に行う方が多いですが、もっとも良いとされるのは「天赦日」です。天赦日とは最上の吉日とされ、年に6日ほどしかありません。そのため工事のタイミングと合う場合は天赦日に地鎮祭を執り行うことが良いでしょう。
地鎮祭の方法
地鎮祭は一般的に以下の流れで執り行われます。
1. 開会の儀
2. 修祓の儀(しゅばつのぎ)
3. 降神の儀(こうじんのぎ)
4. 献饌の儀(けんせんのぎ)
5. 祝詞奏上(のりとそうじょう)
6. 四方祓いの儀(しほうばらいのぎ)
7. 地鎮の儀(かりそめの儀・うがちぞめの儀・くわいれの儀)
8. 玉串奉奠(たまぐしほうてん)
9. 徹饌の儀(てっせん)
10. 昇神の儀(しょうじんのぎ)
11. 直会(なおらい)
お施主様が地鎮祭で作業する場面は、7.地鎮の儀と8.玉串奉奠です。ただし本記事での地鎮祭の方法は仏教や神道のケースです。
信仰する宗教によって異なるため、一例としてください。
始めに開会の儀に入る前に、手水を行います(手水の儀)。神社の手水と同じ「左手・右手・左手・口」の順番に水をつけて清め、紙で口を拭きましょう。なお参列者全員が行います。
手水の儀が完了した後はテント内の椅子に座って始めるのを待ちます。
・ 開会の儀
地鎮際の進行は神主様または建築会社の方が進めます。進行する方が地鎮祭を始める合図を行います。
・ 修祓の儀(しゅばつのぎ)
神主様がお祓いの言葉を奏上(そうじょう)参列者とお供え物を祓い清める儀式です。
大麻(おおぬさ)を祭壇と参列者に向かって振り、お祓いをします。
参列者は頭を下げてご低頭(ごていとう)しましょう。
・ 降神の儀(こうじんのぎ)
神主様が「オオー」と発声し神様を呼ぶ儀式です。参列者も神様に来てもらうためにご低頭します。
・ 献饌の儀(けんせんのぎ)
神主様がご神酒と水の蓋を開け神様に頂いてもらう儀式です。
参列者は静かに見ていましょう。
・ 祝詞奏上(のりとそうじょう)
祝詞とは神主様が神様へ奏上する言葉です。工事の安全を願い、「建築主」「建築場所」「建築会社」を読みあげ工事の安全を祈願します。
祝詞奏上している時は、参列者は頭を下げてご低頭します。
・ 四方祓いの儀(しほうばらいのぎ)
神主様が敷地の四隅と中央に白紙と米で清めます。また施主様も同行し、酒と塩で清めましょう。ただし地方によっては地鎮祭終了後に施主が酒と塩で清める場合もあります。
他の参列者は座ったまま待っていましょう。
・ 地鎮の儀(かりそめの儀・うがちぞめの儀・くわいれの儀)
地鎮の儀は3つに分かれます。設計士、お施主様、建築会社が「えいえいえい」と3回声を出して行う作業です。
かりそめの儀は設計士が砂山のある草を鎌でかりそめる儀式です。
うがちぞめの儀は施主が砂山を鍬でさし、山を崩す作業です。「えいえいえい」の3回目で崩しましょう。
くわいれの儀は建築会社の方が鋤をお持ち頂き、柱の穴を掘る儀式です。
3つの儀式が完了した後神主様が沈め物を砂山に差し込みます。
・ 玉串奉奠(たまぐしほうてん)
神主様から預かった玉ぐしを祭殿に置き、2例2拍手1例を行います。
施主様から奉奠し、施主のご家族、建築会社の順番で行います。
・ 徹饌の儀(てっせんのぎ)
撤饌の儀では降神の儀で行った神酒と水の蓋を行います。参列者が座ったままで儀式を見ていましょう。
・ 昇神の儀(しょうじんのぎ)
神主様が再度「オオー」と発声し神様にお戻り頂く儀式です。参列者の方はご低頭しておきましょう。
・ 神酒拝戴(しんしゅはいたい)
神様へ献上した祭壇の神酒を参列者全員で頂戴します。神主様のご発声と一緒に頂きましょう。
・ 閉式の儀
以上で地鎮祭が終了です。
施主の方から工事関係者への労いの言葉をかけてあげましょう。
またお供え物はお施主様がもらえるケースと神社が持ち帰るケースの2パターンあります。神主様へ聞くのが煩わしい方は建築会社の方へ相談しましょう。
注文住宅新築時に行う地鎮祭の費用と相場
地鎮祭の費用は「30,000円」前後です。30,000円は初穂料または玉ぐし料として神主様へ支払う費用です。ただし神社によっては20,000円や50,000円の場合もあるため事前に確認しましょう。
また地鎮祭を行うための祭壇やテントなどは建築会社の方で準備してくれるケースが多いです。その費用は注文住宅の工事費に含まれている場合が多いですが、建築会社によっては別途費用と設定しているケースもあり「50,000円~100,000円」前後の費用がかかります。地鎮祭の費用は建築会社へ事前に確認しておくことをおすすめします。
なお、地鎮祭の段取りは建築会社が行ってくれるケースが多いため、重ねて打ち合わせしておきましょう。
地鎮祭の注意点・マナー
地鎮祭は神様に来てもらいながら執り行う式典です。そのため参列者の方は神様に失礼のないように、地鎮祭のマナーや注意点を理解してから参列しましょう。ここでは5つの項目を紹介します。
1. のし袋の準備
2. 地鎮祭の参列する際の服装
3. 玉串奉奠時の注意点
4. 神酒の準備
5. 神社の選定はどうする
6. 参列者を呼ぶとき
のし袋準備
初穂料を入れるのし袋は水引を使用したものを使用しましょう。印刷したものでも構いませんが、神様へ献上する費用であるため、出来れば水引がおすすめです。なおのし袋には建築主である自身の名前を記載します。
地鎮祭の参列する際の服装
服装には決まりはありませんが、式典であるため正装がおすすめです。スーツやジャケットなどを来て参列するようにしましょう。もちろんサンダルや派手な服装では参列しないようにしましょう。
玉串奉奠時の注意点
玉串は神主様から頂戴した後祭壇に向かって時計回り一回転させ、根の方から祭壇に置くようにします。その後2礼2拍手1例し、工事の安全を祈願しましょう。また玉串奉奠は参列者全員が行うケースが多いです。特に施主側の参列者は全員行いますので、事前に人数を神社の方や建築会社へ伝えておくことで、玉串が足りないということもなくなります。
神酒の準備
地鎮祭を行う際は、施主も神酒の用意を行います。一般的には日本酒1小瓶を一つまたは2本入りセットに熨斗(のし)を貼って献上します。神酒は建築会社が用意してくれる場合もあるため、打ち合わせしておきましょう。
神社の選定はどうする
地鎮祭を依頼する神社はどこでも構いません。ただしどの地域にも氏神様がおります。氏神様とは地域の土地を共同で祀る神様のことです。他の神様を呼ぶよりできれば氏神様を祀っている神社にお願いした方が良いかもしれません。氏神様が分からない場合は神社庁へ連絡すると教えてもらえます。
参列者を呼ぶとき
地鎮祭の参列者は一般的に施主と家族、建築会社で執り行われますが、他の方も呼んでも問題ありません。例えば施主の親族や融資してくれた金融機関、土地の売買仲介をしてくれた不動産会社など、注文住宅の建築に携わった方を呼んでも良いです。ただし玉ぐしの兼ね合いや席の確保などをしなければいけませんので、建築会社へ事前に参列者を伝えておきましょう。
地鎮祭後の上棟式について
以前はよく聞いた上棟式ですが、近年では執り行う家庭や建築会社が減ってきました。
そのため上棟式を聞いたこともない方が多いため、上棟式の内容について紹介します。
上棟式とは?
上棟式とは屋根の一番高い位置にある棟木の取り付けられる時にお祝いする式典です。昔は屋根の上から餅やお金を配る儀式をした後に、工事関係者と宴会などを行っていました。しかし近年では上棟式を行う家庭が少なくなっています。その理由にツーバイフォー工法の住宅が増えてきたことが挙げられます。ツーバイフォー工法では棟上げ工事がありません。そのため上棟式を行わず工事を進めるケースが多いためです。
上棟式の費用
上棟式の費用は参列者の数にもよりますが、「100,000円~200,000円」前後です。
内訳は以下の通りです。
・ 初穂料…30,000円前後
・ 宴会費用…一人あたり3,000円~5,000円
・ 引き出物…一人あたり3,000円前後
仮に参列者が10人である場合は90,000円~110,000円、20人である場合は180,000円~220,000円です。
また宴会会場を確保する場合は更に別途費用が必要です。そのため上記の金額が必要となります。
ただし宴会場所や引き出物によって金額が異なります。また初穂料も神社によって異なるため、上棟式を行う際は事前に建築会社と打合せしておきましょう。
新築時の地鎮祭に関するQ&A
ここでは地鎮祭の費用に関するQ&Aを紹介します。
地鎮祭に費用と行う必要性について解説します。
地鎮祭の費用を抑える方法はありますか?
地鎮祭は神様にお願いして執り行うものであるため費用を抑えるという考えは控えた方が良いです。ただし、地鎮祭の費用を抑えたい方はお供え物を自分で用意することで費用を抑えることも可能な場合があります。
お供え物は主に以下の通りです。
・ 米
・ 酒
・ お餅
・ 海魚または川魚
・ 海菜
・ 野菜
・ 塩
・ 水
基本的には神社の方でお供え物を用意してもらいますが、自身で用意すれば初穂料が安くなる場合もあります。お供え物代金は初穂料に含まれていますが、少しでも費用を抑えたいがゆえに、「初穂料を安くできますか?」とは聞きにくいのではないでしょうか。そのため地鎮祭の費用を安くするという考えは控えるようにしましょう。
地鎮祭は行う必要がありますか?
地鎮祭はお客様の任意です。宗教的な式典なので行わない方もいらっしゃいます。神様を信じていない方には意味のない式典でしょう。
しかし地鎮祭は一生その場所に住む可能性のある住宅の安全を祈願する式典です。建築会社も工事の安全を祈願する式典であるため、執り行いたいと思うのが必然です。また地鎮祭をすることで神主様から鎮め物を頂戴し、土に埋め込みお守りの役割を果たしてくれます。今後の生活の安全の祈願とすれば、地鎮祭を行うことをおすすめします。
サティスホーム本社営業部長:小林大将
2級建築士と宅地建物取引士の資格を取得後、サティスホームで現場監督を10年経験。携わらせて頂いたお客様は200棟以上。その後、本社営業部長としてお客様の家づくりをお手伝いさせて頂いてます。