ローコスト住宅が注目されている近年、建売メーカーは各社価格競争しており、低価格で住宅が取得できることから建売住宅の人気が高まっています。しかしながら建売住宅を購入して住んでみたものの、生活しにくく後悔したという意見も少なくありません。後悔したという方はどのような点であるのでしょうか。記事では建売住宅でよくある後悔理由と失敗しないためのチェックポイントを解説します。これからマイホームの取得を検討している方はぜひ参考にしてください。
建売あるある:購入後に後悔する理由とは?
建売住宅を購入してから後悔する理由にはどのような点が挙げられるのでしょうか。
動線が考慮されておらず生活にしにくい
建売住宅の中にはコストを最小限にして販売している建物も多く、間取りの細かな点が考慮されていない物件が多いです。特に生活動線や家事動線などは日常生活を送るうえで重要なポイントです。しかし動線を無視した間取りや複数の扉があり各部屋の行き来が大変な建物も少なくありません。その結果落ち着けるマイホームであるにもかかわらず、生活しているとストレスを感じる方もいらっしゃいます。注文住宅であれば間取りを一から考えるため、動線を考慮した建物にすることができます。しかし完成している建売住宅の間取りは変更できないため、購入して後悔したという方がいらっしゃるのです。
収納スペースが少ない
建売住宅は収納スペースが少ない傾向にあります。コストを最小限にしつつ部屋の広さを優先して設計する傾向にあります。例えばリビングが「12帖+収納スペース」であるより、収納スペースをなくして14帖などに設計します。多くの方は建売住宅のチラシなどを見る際、注目するのは建物の収納より部屋の大きさです。また実物を見る時も部屋が広いと好感触を持つ方も多いのではないでしょうか。建売メーカーはお客様の感触を理解しているため、建物の間取りの優先事項がある程度決められています。そのため住んでから収納スペースが少ないと感じて後悔している方もいらっしゃいます。
住宅設備のクオリティが低い
コストを優先した建売住宅はキッチンなどの設備のクオリティが低い物件も多いです。近年の住宅設備はクオリティが高く、家事効率を上げることができます。しかし建売住宅には導入されているケースも少ないため、使い勝手の悪い家だったと後悔した方も多いです。
住宅ローン控除できる金額が少ない
建物の性能だけでなく、税金面に関しても後悔したという意見があります。省エネ性能が伴う建売住宅は決して多くはありません。省エネ性能が伴った長期優良住宅やZEH住宅などは一般住宅と比べてコスト高になってしまうためです。しかし省エネ性能が伴っていないと税金面の控除も低くなり、節税効果が弱まります。住宅ローン控除を一例に挙げると、省エネ性能が伴っていない建売住宅は「その他の住宅」に該当し、控除額の上限が以下の表の通り低くなります。
住宅の環境性能 | 令和4年・5年入居 | 令和6年・7年入居 |
長期優良住宅・低炭素住宅 | 5,000万円 | 4,500万円 |
ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | 4,000万円 |
省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 | 3,000万円 |
その他の住宅 | 3,000万円 | 0円 |
住宅ローン控除とは住宅ローンを借入した方のみ、残債に対して0.7%の金額を13年間所得税から差し引ける税額控除です。例えば3,000万円の残債がある場合、28万円分所得税を控除できるということです。しかし令和6年以降に入居するその他の住宅に関しては住宅ローン控除の適用が受けることができません。もちろん省エネ性能が伴う建売住宅もありますが、コスト高になってしまうため、一般的には省エネが導入されていない建物が多い傾向にあります。
建売あるある:マイホーム購入を失敗する理由とは?
建売住宅に問わず、注文住宅や中古住宅などのマイホームを購入して失敗したという方もいらっしゃいます。どのような理由が挙げられるのでしょうか。ここでは「マイホーム購入を失敗したかも…」と感じられた例をご紹介します。
レイアウトを考えずに購入してしまった
家具などを配置すると部屋が狭くなって使いにくいという意見が挙げられます。事前に家具や家電を配置したレイアウトを決めていなかったための失敗例です。一見納得できるリビングの広さだったものの、ソファーやテーブル、テレビを置くと移動スペースが狭くなり動産が悪いと感じた事例です。建売住宅は実物が見られるものの、家具を置いた場合の間取りを想定していない方が多いです。また注文住宅はイメージで間取りを決めなければいけず、事前にレイアウトを決めていない方もいらっしゃいます。建物ばかりに意識が行ってしまい、レイアウトを決めずに購入・建築した失敗例です。
家族が増えることを想定していなかった
家族が増えることを想定していなかったため、部屋が足りなくなった失敗例です。お子様が増えるだけでなく、場合によっては親と同居することも考慮しておいた方が良いでしょう。そのため客間などや追加の子ども部屋なども考慮した間取りの住宅であることが大切です。
毎月の返済額に圧迫された
住宅ローンを借入したものの、毎月の返済額に圧迫されたという失敗例です。建売住宅をはじめ、住宅の購入費用・建築費用は1,000万円台もあれば、5,000万円を超える場合もあります。高額な借り入れをすると月々の返済額も高額となり、生活費にも影響が出る場合もあります。そのため自身の年収と相談して借入額を決めなければいけません。とはいえどれくらいが平均なのか分からない方も多いため、以下の表を参考にしてください。
注文住宅 | 土地購入 注文住宅 |
建売住宅 | 中古住宅 | |
建築費 | 3,569万円 | 4,455万円(土地代含む) | 3,604万円 | 2,614万円 |
年収 | 602万円 | 639万円 | 563万円 | 507万円 |
年数倍率 | 5.9倍 | 6.9倍 | 6.4倍 | 5.1倍 |
上記の表は住宅金融支援機構が発表しているフラット35利用者調査2021年度集計表をまとめたものです。おおよそ年収の5倍から7倍の間の借り入れをしていることがわかります。
建売あるある:正しい建売住宅のメリット・デメリット
建売住宅を購入して後悔する方も多いですが、購入前にメリット・デメリットを理解しておきましょう。
メリット①:費用が安い
建売住宅のメリットは圧倒的なコストの安さです。住宅金融支援機構が発表しているフラット35利用者調査2021年度集計表を確認すると、土地を購入して注文住宅を取得する平均費用は4,455万円であるのに対し、建売住宅は3,604万円です。さらに平均自己資金割合も注文住宅は約400万円であるのに対し、建売住宅は約270万円と支出を抑えて購入することができるメリットがあります。
メリット②:家賃より支出が安くなることも
住宅の取得費用が安いということは、毎月の借入返済額を抑えることも可能です。例えば借入金額を3,600万円と仮定し、金利1.5%の35年返済とすると、毎月の返済額は11万円です。高額の賃料の物件に住んでいる方にとっては、家賃より安くなる場合もあります。
メリット③:入居までが早い
建売住宅を購入するまでは金融機関の融資審査と契約、建物の契約だけで完了するため、おおよそ1か月半〜3か月前後で入居可能です。注文住宅の場合、打ち合わせから契約、着工とさまざまな工程を踏まなければいけず、おおよそ8か月〜1年ほどの期間を要します。すぐに入居できる点は建売住宅の大きなメリットです。
メリット④:間取りを考える必要がない
人によっては家の間取りを考えるのが困難だと感じる方もいらっしゃいます。建売住宅は既に完成している物件を見ることができるため、間取りを考える必要はありません。注文住宅の場合、一から間取りを検討するため、時間と労力を費やします。しかし建売住宅は間取りを考えるのが面倒という方に向いている建物でもあります。
デメリット①:オリジナリティがない
建売メーカーは大きな土地を購入して造成工事を行い、似たような建物を複数建築します。そのため隣地の建物と似た建物になってしまうため、オリジナリティがない住宅になってしまうデメリットがあります。多くの方が、似たような建物が並んでいる住宅街を見たことがあるのではないでしょうか。建売住宅はコストや工期を短縮するために同じような建物を建築する傾向があります。もちろんすべてではありませんが、オリジナリティがない建売住宅が多いです。
デメリット②:自由度がない
既に完成している建売住宅であるため、建物の間取り、住宅設備、外構などを自分好みに設計することができません。「部屋を大きくしたい」「設備を変えたい」と思っても建売住宅の場合は変えることができないため、自由度が低いところが大きなデメリットです。
デメリット③:郊外物件が多い
大きな土地は都心部ではないため、郊外の土地を購入して建築されることが多いです。建売メーカーはある程度の広い土地を購入して建築してから販売します。そのため土地の高い場所では必然と価格も高くなってしまい、購入者の間口が狭くなってしまうことから、土地代の安い郊外で販売されることが多いです。
建売あるある:後悔しないためのチェックポイント
建売住宅を購入してから後悔しないためにもさまざまなチェックポイントを理解しておく必要があります。
予算を決めておく
いくら良い建売住宅を建築しても、毎日の生活費が圧迫されては意味がありません。そのため返済できる借入額(予算)を設定しておくことが大切です。とはいえどれくらいの返済額か分からない方も多いため、一例として借入額ごとの返済額をまとめました。
借入額 | 毎月の返済額(35年ローン・金利1.5%想定) |
2,000万円 | 61,236円 |
2,500万円 | 76,546円 |
3,000万円 | 91,855円 |
3,500万円 | 107,164円 |
4,000万円 | 122,473円 |
4,500万円 | 137,782円 |
5,000万円 | 153,092円 |
上記の表は返済額の一例であるため、増減する可能性があります。とはいえ大きな金額差は発生しない可能性が高く、参考としてください。
理想の住宅であるか
間取りや広さ、住宅設備などが納得でき、理想の住宅であるかチェックしましょう。建売住宅を購入してからでは建物を変更することができません。後悔しないためにも建物に求める項目をチェックリストで作成し、該当するか確認しましょう。
数多くの建売住宅を見てみる
建売住宅は建売メーカーによって特徴が異なります。価格だけでなく、住宅設備の大きな違いが生まれるため、数多くの施工例を見ることをおすすめします。建売住宅はメーカーによって特色がよく出る建物です。良い物件もあればお客様に合わない物件も数多くあるため、知識を蓄えるためにも実際に施工された物件を確認しておきましょう。
建売あるあるまとめ
建売住宅は他の住宅と比較するとコストを抑えて取得できる反面、好きな間取り、住宅設備などを取り入れることができません。さらに建物によって生活動線が悪く生活しにくいと感じる方も多くいらっしゃいます。そのため、建売住宅を見て購入する前に、家具などを配置した時をイメージし、自身が生活している状況を想像することが大切です。また建物の後悔だけでなく、資金面の失敗もあるため、毎月の生活費とローン返済額などと年収のバランスを考慮しておくことを意識しておきましょう。
サティスホーム本社営業部長:小林大将
2級建築士と宅地建物取引士の資格を取得後、サティスホームで現場監督を10年経験。携わらせて頂いたお客様は200棟以上。その後、本社営業部長としてお客様の家づくりをお手伝いさせて頂いてます。