近年ではおしゃれなデザインの住宅が増え、ロの字やコの字の形状の建物の人気が高く、中庭を設けておしゃれな空間を造り上げています。しかしそこで疑問に思うのは「中庭には雨が溜まらないのか」という疑問です。建物に囲まれているため、どこに排水されているのか分からない方も多いのではないでしょうか。本記事では中庭を設けた際の大雨対策と、中庭のメリット・デメリットを紹介します。これから住宅を建築する方はぜひ参考にしてください。
中庭のある家は大雨対策が必要?
そもそも中庭のある家は雨対策を検討しなければいけないのでしょうか。
排水処理がされている
中庭には排水処理がされています。排水処理は浸透式と排水式の2種類に分かれ、一般的には排水式が取り入れられることが多いです。中庭の1ヶ所または複数個所に排水溝を設け、雨水などを側溝に繋げることで排水処理を行っています。浸透式はそのまま地面に雨水を浸透させる方法です。特に大掛かりな工事はなく、地盤状況によって採用するかを検討します。浸透しやすい地盤であれば浸透式が採用されますが、浸透しきれないと判断した場合は排水式を取り入れます。そのため、特別お客様の方で雨対策をする必要はありません。とはいえ一つ行って欲しい作業があるため次の項で紹介します。
排水溝の掃除は定期的に
排水式を取り入れた場合、排水溝が必ずあります。排水溝に落ち葉などが溜まってしまうと雨水が流れていかず、中庭が水たまりになってしまう可能性があるため定期的に掃除をしましょう。中庭は外部にあるため、落ち葉などが飛んでくる可能性があります。放置したままにすると雨水がきれいに流れないため定期的に掃除しましょう。
中庭のある家の大雨対策
中庭のある家は排水処理などがしっかりされておりますが、それでも不安に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。確かに大雨など降水量が多い場合、排水しきれないことも考えられます。実際に道路のマンホールから雨水が溢れているところを見たことがあるという方も多いのではないでしょうか。そのため、大雨が降った時に備えてできる対策を紹介します。
設計時に勾配を設ける
大雨が降っても排水されるように、設計時に勾配を設けておくことが大切です。一般的に雨水を考慮して勾配を設けるのが通常です。家の駐車場などを見てわかる通り、側溝や道路に向かって斜めになっています。全て雨水が流れるようにするためです。中庭も同様に排水溝に雨水が流れるように勾配を設けておくと、大雨が降ってもきれいに流れます。勾配に関しては建築士の方が計算して設計してくれますので、契約前に図面の確認をしておきましょう。
水災の保険には加入しておくべき
豪雨などによって建物が冠水した場合は保険が下りる場合もあるため加入しておくことをおすすめします。いくら建物の対策を行っていても自然災害の力は脅威で予想できるものではありません。しかし保険に加入しておけばある程度損害に対して補償が降ります。一般的には水災補償は以下の通りです。
● 建物(家財)の保険価額に対して30%以上の損害を受けた場合
● 「床上浸水」または「地盤面から45cmを超える浸水」によって損害が生じた場合
もちろん保険会社によって水災補償の内容は異なります。事前に確認し、どれくらい補償されるか確認しておきましょう。
床の仕上げ方法
中庭の床の仕上げ材は石張りやレンガ敷、モルタルなどがおすすめですが、浸透しきれない可能性も高いため、排水溝に向けて勾配をつけることできれいに流れるようになります。ただし、費用も割高となってしまうため、建築会社の方と相談して仕上げ材を決めましょう。
中庭のある家のメリット
中庭を設けることでどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは5つのメリットについて紹介します。
中庭を中心に明るくなる
家の中心に中庭を設けることで、日当たりが良くなります。一般的な住宅の場合、「日当たりの良い部屋は南側、日当たりの悪い部屋は北側」となります。しかし中央に中庭を設けることで、建物の中心から自然光を取り入れることができるため、どの部屋も明るくすることが可能となります。
おしゃれな空間のワンポイントになる
中庭に植栽などを設けると緑を取り入れたワンポイント空間になります。家のどこからでも中庭を覗けることになり、自然を感じることも可能です。さらに照明などでライトアップすれば、夜もおしゃれな住宅に。各家庭によって中庭の使用用途は異なりますが、おしゃれさを向上させたいという方が取り入れている傾向にあります。
プライバシーを気にしない
ロの字の建物の形状の中心に中庭を設ければ、外から見られる心配がないため、プライバシーを気にしない空間とすることができます。一般的な庭であれば、外から見られないようにするため、外周をフェンスなどで囲います。しかし費用が高くなるため、ある程度の高さにする方が多いです。そのため通行者などに庭が見られてしまう可能性も高くなるでしょう。一方ロの字の中庭であれば建物に囲われているため外から見られる心配はありません。そのメリットから家庭によって中庭でバーベキューする人や洗濯物を干す場所として利用している方も多いです。
家の中をショートカットできる
中庭を経由して各部屋へショートカットすることができます。ただし大きな中庭で遠回りするのに時間がかかる場合のみです。中庭を経由することで家の中の移動時間を短縮することが可能です。とはいえ中庭が小さいとかえって時間がかかることも。窓の開け閉めなどを考慮するとショートカットにならない場合もあるでしょう。
家の空気の入れ替えがしやすい
自宅の換気を行う際に重要なのは、風の流れです。中庭の窓を開けることで家の中心が風の通り道となるため換気効率が向上します。一般的な家庭では各部屋の窓を開けて換気しますが、風の通り道がないため十分な換気ができない傾向にあります。しかし中庭があるだけで、家全体の風の通り道ができるため、空気の入れ替えをしやすくなります。
中庭のある家のデメリット
一方中庭を設けることによってデメリットが生まれることもあります。ここでは5つ紹介します。
定期的な掃除が必要
中庭には落ち葉などが飛んできます。さらに中庭を囲む窓も黄砂などによって汚れることも多いため、定期的な清掃が必要です。きれいな状態を維持するためには月1回、もしくはそれ以上の清掃が求められます。落ち葉などは排水溝の溜まりやすくなるため雨水がうまく流れない原因にもなるでしょう。さらに窓の汚れがたまるとせっかくおしゃれな中庭がきれいに見えなくなります。
冷暖房効率が下がる
中庭は窓で囲まれているため冷暖房効率が低下します。近年の窓は断熱性能が高いですが、近くに行くと寒く感じる方も多いのではないでしょうか。どうしても外気の気温の影響をうけてしまうため、冷暖房効率が低下してしまうデメリットがあります。カーテンなどを利用することで効率の低下を軽減できますが、中庭が見えなくなってしまうデメリットにつながります。
虫が発生することも
中庭に植栽を植えていると虫が発生することもあります。さらに大雨などによって湿気などが溜まってしまい、幼虫の住処になる可能性も考えられます。特に夏場は虫の発生が多く、ライトアップしていると近隣の虫の集まりどころになることもあるでしょう。防虫処理はもちろん、定期的に中庭の状況を確認し、虫が発生しないように注意しなければいけません。
大きな敷地が必要
中庭を設ける際はある程度大きな敷地が求められます。もちろん建物の広さによって異なるものの、例えば30坪の一般住宅を建築する場合と、中庭がある30坪の住宅では必要な敷地面積が異なります。中庭がある住宅の方が広い敷地が求められるでしょう。さらに土地には建ぺい率などの敷地に対して建築できる割合が定められています。中庭を設けることで建ぺい率がオーバーしてしまうことも考えられるため、ある程度広さに余裕のある土地が必要です。
コストが割高になることも
前述のように同じ30坪の建物を建築した場合、中庭がある建物の方がコストが割高となってしまう可能性があります。中庭の施工費用が追加となるため、数十万円~数百万円ほど高くなるでしょう。もちろん施工会社によって異なるため一概には言えません。とはいえ一般的には窓の施工範囲や外壁の施工範囲が増えることになるため、費用が高くなるデメリットが挙げられます。
中庭のある家で後悔しないための間取り設計
では中庭のある家で後悔しないためにはどのような間取りを設計したら良いのでしょうか。ここでは中庭を設ける際の注意点やポイントについて紹介します。
大雨が降っても排水できるように設計する
大雨が降っても排水しきれるように、排水溝や排水管の数を複数設置しておくのも一つの方法です。もちろん排水に関しては設計士が細かく計算を行っているため、問題ないかと思います。しかし想定できないほどの雨が降った場合、排水しきれない可能性もあるでしょう。そのような時に備え、あらかじめ排水溝などの数を増やしておくのも一つの方法です。中庭に水が溜まって自宅内が水浸しとなったということにならないためも、選択肢の一つとして検討しておきましょう。
生活動線上不便がないかを考慮する
中庭を設けることによって生活動線が悪くならないかチェックしておきましょう。「リビングやキッチンから各部屋へ行くのに手間がかかる」「中庭が邪魔で行き来しにくい」など、中庭があることで家事効率が悪くなる可能性もあります。そのため設計時に動線が悪くならないか何度も確認しておきましょう。
予算と広さのバランスを考える
先ほどもお伝えした通り、中庭を設けることで建築費が割高となり、予算をオーバーしてしまっては意味がありません。さらに「中庭を設置したために建物がコンパクトになった」という意見もあります。おしゃれな住宅にしたいがために中庭を設けたものの、結果住みにくい家になった方もたくさんいらっしゃいます。そのため予算と建物の広さのバランスを考慮して取り入れるべきか検討しましょう。
使用用途を明確にする
なぜ中庭を設けるのかを決めてから取り入れましょう。先ほどもお伝えした通り、中庭を設けることで数多くのデメリットにつながります。虫の発生やコスト高などさまざまな問題があります。おしゃれな家にすることもできますが、どのような用途があるのかを検討しておくことが大切です。一般には「日向ぼっこする場所」「家族とバーベキューする場所」「洗濯物を干す場所」として利用されます。使用用途は各家庭によって異なりますので、家族会議でしっかり確認し、本当に必要なのかを検討してください。
中庭のある家と大雨についてのまとめ
中庭を設けた場合、大雨によって排水しきれない場合も0ではありません。設計士が細かな排水の計算を行うものの、予想できない大雨が降る可能性もあります。そのため排水できる箇所を増やしておくのも一つの方法です。とはいえコストにも影響が出てしまうため、そもそも中庭を設けるべきかを慎重に検討してください。中庭を設けることで予算オーバーや狭い建物にもなりかねないため、建築会社の方と慎重に打ち合わせするようにしましょう。
サティスホーム本社営業部長:小林大将
2級建築士と宅地建物取引士の資格を取得後、サティスホームで現場監督を10年経験。携わらせて頂いたお客様は200棟以上。その後、本社営業部長としてお客様の家づくりをお手伝いさせて頂いてます。