近年、注文住宅を建築する際、主婦の方から人気が出てきたのが「家事室」です。名前の通り、家事を行う空間として利用します。とはいえ、家事ならどこでもできると考えている人もいらっしゃるため、まだまだ認知度は高くありません。しかし家事室があることで家事の効率化を図ることができ、より快適に生活することが可能となります。本記事では家事室の概要とメリット・デメリット、家事室を決める3つのポイントを紹介します。重ねて家事室の成功例と失敗例、注意点も解説するため、これから注文住宅を建築する予定の方はぜひ参考にしてください。
家事室とは?
家事室とは、家事を行うための部屋を指します。主な使用用途は以下の通りです。
● 洗濯物を干すスペース
● 洗濯物をたたむ部屋
● アイロンをかける部屋
● ミシンなどの裁縫部屋 など
主に洗濯物関連の家事を行うため、「ランドリールーム」と呼ばれる場合もあります。
もちろん家庭によっては家事室の使用用途は異なります。家事室は独立した部屋だけでなく、洗面所の隣などに設ける場合があります。洗濯物を干すスペースとして利用する方もいれば、干した後アイロンをかける方もいらっしゃるためです。決まった用途もなく、認知度が低いため、家事室と言われてもわからない方も多いです。しかし近年では快適な住宅が求められており、なおかつ自宅で仕事をする方も増えてきました。仕事用であれば書斎、家事用であれば家事室というイメージを持っていただければ分かるのではないでしょうか。
家事室の部屋干しのメリット・デメリット
家事室を取り入れるか悩んでいる方は、メリット・デメリットを理解してから判断しましょう。
家事室のメリット
家事室のメリットは主に以下の項目が挙げられます。
● 洗濯にまつわる作業を集約できる
● プライベート空間とすることもできる
● 生活動線の効率化が図れる
家事室を取り入れることで、洗濯物を干すスペースやアイロンをかけるところなどを一点に集約することが可能です。そのため、干した洗濯物を家事室でたたむこともでき、各部屋に持って行きやすくなることから、生活動線の効率化を図ることもできます。また仕切りをつけることで、プライベート空間にすることもできるでしょう。
家事室のデメリット
一方家事室には以下のデメリットも存在します。
● 他の部屋が小さくなる可能性もある
● 間取りの工夫が必要
● 結局使わなくなることもある
家事室を作るということは、「他の部屋が小さくなる」または「建物全体の面積が大きくなるため建築費が割高になる」ということです。家事室を追加で設けた際は、建築費が高くなる可能性も高いです。建築費を増やしたくない場合は、建物の面積を大きくしない工夫が必要なため、他の部屋が小さくなることになります。結果「寝室が小さい」「収納スペースが足りない」ということにも繋がりかねません。もちろん一概には言えないものの、家事室は他の部屋との動線を考慮する方も多いため、間取りの工夫も求められます。また将来的に使用しなくなる方も多い点はデメリットと言えるでしょう。
家事室の間取りの決め方 3つのポイント
家事室は各家庭によって間取りが大きく異なります。洗面所の横のパントリーとして設ける方もいれば、書斎のように独立した空間に設計する方もいます。また大きさも人それぞれであるため、間取りを決める際のポイントを3つ紹介します。
機能性・デザインで決める
家事室の間取りを機能性・デザイン性を考慮して決める方法です。家事効率を上げるために、洗面所横に家事室を設置する間取りや、在宅ワークもかねて作業スペースとして設計する方もいらっしゃいます。家事室は決まった間取りが定められていないため、使用用途によって好きに決めても良いです。どのような機能を持ち合わせた家事室にしたいかを決めて、間取りを考慮していきましょう。また雑誌やインターネットなどで家事室を調べ、気に入った内装のデザインと同じ間取りを選んでも問題ありません。ただし建築会社の人に希望の間取りを理解してもらうためにも、写真や画像は保存しておきましょう。
費用で決める
家事室の間取りを費用面から決めても良いです。家事室の大きさは一般的に「1.5畳〜3畳程度」です。大きさから考慮すると「約60万円〜120万円」ほどの工事費用となります。もちろん家事室分の面積を追加工事した場合の費用です。先ほどもお伝えした通り、建物の面積を変えずに他の部屋を小さくする場合は上記ほどの費用は発生しません。しかし面積を増やした場合は、もちろん建築費も高くなります。大手ハウスメーカーなどに依頼した場合は、「90万円〜150万円」近くになる可能性もあるでしょう。家事室を作るために建物の面積を少し増やしただけでも高額な追加費用が発生するため、家事室の大きさをコスト面から決めても良いでしょう。
施工例を見て決める
家事室の施工例を見て間取りを決めても良いでしょう。実際の施工例を見ることで、作業している状況をイメージすることが可能です。施工例を見て、自分が家事室にいる際、作業しやすい大きさなのか判断できるでしょう。家事室の施工例を見るためには、建築会社の展示場や、完成見学会に足を運ぶ必要があります。ネットの画像で大きさをイメージして間取りを作成すると、「思ったより狭かった」という失敗にもつながるため、施工例を見るようにして間取りを決めましょう。
家事室の間取りの成功例
家事室はさまざまな使用用途が挙げられます。各家庭によって間取りは異なりますが、ここでは家事室の間取りの成功例を紹介します。
家事室の成功例①:キッチン・洗面所・干しスペースの動線を考慮した
家事室を洗面所とキッチンから行き来しやすい場所に設置した成功例です。専業主婦(夫)の方は、洗濯と料理を並行して行うことが多いため、家事室を双方に行き来しやすい間取りに設置した成功例です。わざわざ遠回りする必要性もないため、家事を効率よく行うことが可能です。また洗濯機がある洗面所から干しスペースまでの動線も考慮し、スムーズに洗濯物を干せる状態もよかったという意見もあります。
家事室の成功例②:日あたりの良い家事室
家事室を作業スペースとして利用するため、あらかじめ日当たりの良い位置に設置した例です。一般的に洗面所などは北側に設置することが多いため、家事室を独立させ南側に配置します。洗濯所と隣接していないため効率性は劣りますが、洗濯物を干す場所としては最適です。また扉などを設置すれば、ぽかぽか陽気の中でくつろげるプライベート空間としても利用できるでしょう。
家事室の成功例③:ウッドデッキに隣接した家事コーナー
ウッドデッキを取り付けた家庭では、ウッドデッキで洗濯物を干す方が多いため、家事室を隣接したという間取り例です。干した洗濯物を畳むスペースとして利用する場合やアイロンをかける場所として利用できます。もちろんウッドデッキに限らず、洗濯物を干す中庭に隣接しても良いでしょう。すぐに洗濯物を取れる場所の隣に家事室を作って成功したという一例です。
家事室の成功例④:中庭が見える家事室
中庭を見ながら作業できるスペースにした成功例です。窓を開けて作業したい方や庭を見ながらアイディアが生まれる方などに向いています。庭にこだわった住宅を建築した方などにおすすめです。
よくある家事室の間取りの失敗例
成功例を紹介しましたが、失敗例もあります。失敗例を理解しておかないと、住宅が完成してから後悔することにもつながりかねません。そのためここでは4つの失敗事例を紹介します。
家事室の失敗例①:動線が悪く使いにくい
とりあえず洗面所の横に家事室を設計したものの、他の部屋への行き来を考慮しておらず使いにくいという失敗例です。先ほどもお伝えしましたが、家事室を取り入れる際は他の間取りとのバランスを考慮しなければいけません。家事室から各部屋への動線は問題ないかを、契約前に確認しておきましょう。
家事室の失敗例②:家事室が狭すぎた
家事室が狭すぎたあまり、身動きが取りにくく失敗した例です。家事室の平均的な広さは、「1.5畳〜3畳程度」であるものの、デッドスペースを有効活用しようと思い、設計した家事室であったため、思ったより狭い空間となってしまった方もいらっしゃいます。もちろんデッドスペースの活用は有効ですが、家事室の用途は洗濯物のアイロンがけなどがメインです。しかし狭すぎると家事が行いにくく、物置になってしまう可能性もあります。
家事室の失敗例③:作ったけど使わない
家事室を作ったけど使わないという失敗例もよくあります。しかし使う人との違いは、「家事室の使いやすさ」です。上記の失敗例でもお伝えしましたが、生活動線の悪い家事室や狭いスペースであると、使いにくさから使用しなくなる方が多いです。家事室を取り入れる方は、間取りと動線を何度も確認し、長く使えるものにしましょう。
家事室の失敗例④:物置となってしまった
家の収納スペースが不足したあまり、家事室が物置となってしまった失敗例です。家事室を取り入れる際は、他の部屋や収納スペースとのバランスが重要です。家も長く住むと物が増えてしまい、収納が足らないという方も多いです。その結果家事室が物置となってしまい、失敗したという例です。
家事室の間取りが決まらない場合のコツ
家事室の成功例・失敗例を紹介しましたが、それでも間取りが決まらない方もいらっしゃるでしょう。間取りが決まらない場合は以下の3つのコツを意識してみてください。
家事室の間取り図をたくさん見る
注文住宅を建築する方の多くは、自分が建てる図面を多くみる機会がある一方、他の建物の図面を見ることは少ない方が多いです。しかし図面をたくさん見ると、どの場所に家事室があったら便利かを判断することが可能となります。ただし、図面を多く見すぎてしまうと、どれも良いと感じてしまい、結果家事室の間取りが決まらないということにもなりかねません。そのため数枚程度の図面にしておきましょう。図面に関しては、相談している建築会社の方へお伝えするともらえます。
実際の施工例を見る
先ほどの間取りを決めるポイントでもお伝えしましたが、家事室の施工例を見ることが大切です。家事室の大きさだけでなく設計場所などを見ることで、イメージが湧きやすくなります。また見るだけでなく、どのような動線になるかをチェックしておきましょう。
建築会社の意見を参考にする
建築会社の方は、数多くの住宅を手掛けてきています。家事室のある家も造ってきているため、プロの意見を参考にするのも一つの方法です。また建築会社の方は、家事室を造ってきたお客様の意見も聞いています。「実際使いやすいか」「どのような間取りが良かったか」などの声も確認しているため、間取りが決まらない人は相談してみましょう。
家事室の間取りの注意点
家事室を取り入れる際は以下の5点に注意しましょう。
建築予算がオーバーしないか
家事室を取り入れることになった際は、建築予算がオーバーしないか注意が必要です。建築面積を増やして家事室を取り入れることになった場合、工事費用も加算されます。予算がオーバーした場合、「住宅ローンの審査のやり直し」または「自己資金の捻出」で対応しなければいけません。また工事費用が高くなると住宅ローンの審査のやり直しにもなりかねないため、注意しましょう。
他の部屋が小さくならないか
家事室を設計したあまり、他の部屋が小さくなっていないかチェックしましょう。何度もお伝えしていますが、家事室を取り入れることで、他の部屋が小さくなったり、収納スペースが足りなくなる可能性もあります。設計段階で各部屋が小さくないか契約前に確認してください。
家族会議で決める
家事室を取り入れると、旦那様から書斎も欲しいと言われる可能性もあるため、必ず家族会議で家事室を取り入れるか決めましょう。両方取り入れられるのがベストですが、予算や面積の兼ね合いで出来ない方もいらっしゃるでしょう。そのためご夫婦で話し合いを行ってから決めるようにしましょう。
生活動線を考慮した間取りであるか
他の部屋を行き来しやすい家事室になっているか確認しましょう。もちろん家事室の使用用途によって異なりますが、洗濯物などを干すスペース、洗濯物を畳むスペースとして利用するのであれば生活動線を考慮する必要があります。建築会社と契約後に変更するとなると、工期の遅れや各種申請に影響を及ぼしてしまいます。必ず契約前にチェックしましょう。
本当に必要であるかを確認する
これまで家事室のメリットや注意点などを紹介しましたが、そもそも本当に必要であるか確認しておきましょう。家事室は人気が高まりつつありますが、必須な部屋という訳ではありません。工事費や他の部屋への影響もあるため、今一度確認しておきましょう。
家事室での室内干し まとめ
今回は家事室の概要とメリット・デメリット、家事室を決める3つのポイント等を紹介しました。家事室にはさまざまな使用用途があり、家事の効率化を図るだけでなく、個人の空間としても利用できます。一方でしっかり間取りを考慮しないと、他の部屋の大きさや予算面に影響を及ぼしてしまう可能性もあります。そのため本記事で紹介した家事室の成功例・失敗例を参考にし、実物を見て決めていきましょう。とはいえ、住宅を建築する方はほとんど初めてであるため、どのような家事室か悩む方もたくさんいらっしゃいます。家事室を設計する際は、建築会社などのプロの意見を参考に決めていきましょう。
サティスホーム本社営業部長:小林大将
2級建築士と宅地建物取引士の資格を取得後、サティスホームで現場監督を10年経験。携わらせて頂いたお客様は200棟以上。その後、本社営業部長としてお客様の家づくりをお手伝いさせて頂いてます。