暖かい家を造り上げるには断熱材は必須です。近年の住宅にはさまざまな断熱材の種類があり、性能も異なれば価格にも大きな違いがあります。高性能の断熱材ばかりを取り入れると注文住宅の建築予算にも大きな影響を及ぼすため、費用対効果は設計段階で知っておくことが望ましいでしょう。本記事では断熱材の種類と費用について紹介します。断熱材ごとの特徴と費用は理解しておきましょう。これから注文住宅の建築を検討している方はぜひ参考にしてください。
注文住宅の断熱材の費用と相場
注文住宅の断熱材はおおよそ「400,000円~1,500,000円」前後となります。ここまで金額幅が多い理由としては断熱材の種類が挙げられます。具体的な断熱材の種類は後ほど紹介しますが、断熱材にはたくさんの種類があり、性能も異なります。グレードが高ければ熱伝導率も低く、付加効果も見込めます。そのため断熱材によって価格は大きく異なります。
また住宅建築を依頼する会社によっても価格は異なります。大手ハウスメーカーになるほど断熱材の費用が高くなり、工務店であればコストを抑えることが可能です。断熱材は見積書の「本体工事価格」の中に含まれているため、断熱材だけの費用がわかりません。つまり建築会社の方でいくらでも利益を上乗せできるということでもあります。とはいえ本来断熱材だけに利益を乗せるだけでなく、建物全体に利益率を掛け、お客様に提示します。その利益率は大手ハウスメーカーであるほど高い傾向にあるため、工務店で建築する方が安くすることが可能となるということです。
注文住宅の断熱材の選び方
注文住宅の断熱材を選ぶ前に断熱工法と種類について理解しておきましょう。住宅建築には「木造」「鉄筋コンクリート造」などさまざまありますが、すべて断熱材が使用されています。また建物の構造によって断熱材の施工方法も異なるため、断熱工法の違いと断熱材の種類について解説します。
断熱工法の違い
断熱工法には充填断熱工法(内断熱)と外張り断熱工法(外断熱)の2種類あります。それぞれどのような違いがあるのでしょうか。ここでは2つの工法について紹介します。
充填断熱工法(内断熱)
充填断熱工法(内断熱)とは壁や床、天井などの壁の内側に断熱材を入れる工法です。内側に入れることにより断熱層ができ、内側の温度を維持できる効果が見込めます。使用する断熱材はグラスウールやロックウールなどの繊維系が多いものの、外断熱より安い価格になります。そのほかの特徴は以下の通りです。
● 外壁は厚くならない
● 施工が安易であるが、施工不良が発生すると結露が発生する ● 気密性は外断熱より悪い |
充填断熱工法(内断熱)は木造住宅の在来工法に良く採用されています。
外張り断熱工法(外断熱)
外張り断熱工法(外断熱)とは柱の外側から家全体を囲むように断熱材を入れる工法です。本来は鉄筋コンクリート造の住宅に使用されていましたが、近年では内断熱より性能が高いということで、木造住宅にも使用されています。外張り断熱工法の主な特徴は以下の通りです。
● 発泡プラスチック系の断熱材が使用される
● 断熱費用は比較的高い ● 外壁の気密化が容易 |
外張り断熱工法(外断熱)に使用する断熱材は充填断熱工法(内断熱)よりグレードが高い傾向にあります。もちろん施工会社によって異なるため一概には言えないものの、充填断熱工法(内断熱)より費用と性能が高いと言えるでしょう。
断熱材の種類
では断熱材にはどのような種類があるのでしょうか。ここでは大枠となる4種類について解説します。
無機繊維系断熱材
無機繊維系断熱材とは主にガラスを主原料とした断熱材であり、コストが安いことから住宅の建築に最も使用されている特徴があります。特に使われるグラスウールは火災やシロアリに強いといったメリットがあります。木造住宅は他の構造と比べて火災に強いといわれているものの、一度火が付いたら燃えてしまいます。しかしグラスウールはガラス繊維であるために燃えにくく、火災が一気に広がるのを防ぐ効果が見込めます。また住宅の床下には防虫処理をするものの、外来種のシロアリには対応していないケースも多いです。その際にグラスウールがあれば断熱材を蝕むこともなく、最低限の損傷で済ませることにもつながります。コストだけでなく、性能も高い点が住宅に使用される要因にもなっています。
木質繊維系断熱材
木質繊維系断熱材は木材系が主原料となった断熱材です。特に代表的なのは「セルロースナノファイバー」です。セルロースファイバーは新聞紙などの古紙を再利用した断熱材であり、防火性能が高い特徴があります。また古紙であるために湿気に強く、結露対策にも優れています。さらに使用しなくなった段ボールやおがくずなども原料に使われていることからエコ断熱材としても注目を浴びています。ただし、加工するのに手間暇がかかることからグラスウールより価格は高くなり、取扱いしている建築会社も多くはありません。
天然素材系断熱材
天然素材系断熱材を使用した「ウールブレス」と「サーモウール」などが代表的です。天然素材系断熱材は他の断熱材と比べて断熱性能が高い特徴があります。そのため年間の冷暖房使用量の削減につながることから「次世代省エネルギー基準等級4」に適合しています。
また除湿性能と加湿性にも優れていることから、室内の湿度を一定にコントロールし、結露も防止してくれることから、湿気の多い地域でも人気があります。さらに防臭効果もあるため、タバコを吸う方やペットを飼っている方にもおすすめです。ただし天然素材というだけあって価格も非常に高額です。そのため住宅に使用しているご家庭は多いとは言えません。
発泡プラスチック系断熱材
発泡プラスチック系断熱材の代表格としては「硬質ウレタンフォーム」があります。硬質ウレタンフォームはグラスウール同様住宅の建築現場で多く使用されています。また吹き付け工法で高密度に施工することが可能となります。硬質ウレタンフォームは水に強く軽量という特徴を持ち合わせています。しかし火災が発生した際、発砲プラスチックということもあり有毒ガスの発生リスクも高いです。そのため家が全焼していなくてもガスによる被害もあることは理解しておく必要があるでしょう。
断熱材の種類と費用比較一覧表
断熱材にはたくさんの種類があります。先ほどは4項目を紹介しましたが、さらに細分化すると以下の断熱材となります。それぞれの特徴と費用相場を紹介します。
断熱材の種類 | 特徴 | 費用相場 |
グラスウール
(無機繊維系断熱材) |
グラスウールは住宅で最も用いられるガラス繊維の断熱材です。価格も安いですが、十分な断熱性能と耐火性能を持ち合わせています。ただし湿気に弱くカビが生えやすい点が大きなデメリットとしてあげられます。日当たりが悪く、湿度が高い住宅には向いていません。 | 価格は1㎡あたり600~1,800円前後 |
ロックウール
(無機繊維系断熱材) |
ロックウールは玄武岩やスラグなどの鉱物を加工した断熱材です。グラスウール同様断熱性能と耐火性能が高い特徴を持ち合わせています。だだし熱伝導率はロックウールの方が優れていることから断熱性能は少しだけ高いです。その分グラスウールより多少金額が高くなる傾向にあります。 | 価格は1㎡あたり800~2,000円前後 |
セルロースファイバー(木質繊維系断熱材) | セルロースファイバーは段ボールや古紙、おがくずなどを使用した木質繊維系の断熱材です。高い断熱性能と耐火性能、防虫効果が見込めます。ただし施工方法が特殊であるために取扱いしている建築会社も多くはありません。また価格も高額である点が大きな懸念材料でしょう。セルロースファイバーを使用する際は一か所など範囲を決めて施工することをおすすめします。 | 価格は1㎡あたり6,000~9,000円程度 |
インシュレーションボード(木質繊維系断熱材) | 木のチップと水を加熱処理した断熱材です。繊維状にした素材を接着剤と混ぜて固めたものとなります。もちろんセルロースファイバー同様エコな断熱材です。一般的に住宅では使用されるケースは少ないですが、音楽ホールやスタジオなどで使用されるほど、防音効果が高いです。ただし木材であるために湿気に弱い特徴があります。シージングボードを取り付けることでそのデメリットを補うことは可能となりますが、全部含めると費用は高額となります。 | 価格は1㎡あたり6,500~9,500円程度 |
ウールブレス・サーモウール(天然素材系断熱材) | ウールブレスは羊毛を使用した断熱材です。羊の毛をさらに防虫処理してから加工した断熱材です。羊の毛というとイメージ通り高い保温性から断熱性能が高い特徴があります。ただしグラスウールやロックウールより高額であるため、家全体に施工すると価格は高くなりがちです。 | 価格は1㎡あたり1,500~3,500円程度 |
炭化コルク(天然素材系断熱材) | ワインなどに使われるコルクも断熱材として使用されます。コルクには防虫効果があり、ダニ予防にも繋がります。もちろん断熱性能にも優れています。また吸音性能もあるため音楽関連の部屋を作る際は防音効果も見込めます。ただし、費用は高額です。
セルロースファイバーとさほど変わらないため、一部分の部屋に設置するようにしましょう。 |
価格は1㎡あたり8,000円~9,000円程度 |
硬質ウレタンフォーム(発泡プラスチック系断熱材) | 硬質ウレタンフォームは、ポリウレタン樹脂に発泡剤を加えたもので、吹き付け工法で施工するため、隙間なく断熱材を住宅に入れることが可能です。
ただし吹き付け工法は多少手間がかかります。その分費用が高額となってしまう点がデメリットともなります。 |
価格は1㎡あたり3,000~6,000円 |
ポリスチレンフォーム(発泡プラスチック系断熱材) | ポリスチレンフォームはポリスチレンを難燃剤と混ぜて発泡させ、成形した断熱材であり「ビーズ法」と「押出法」の2種類あります。ビーズ法は発泡スチロールと同じ性質であり、押出法は発泡させながら押し出ししたものです。とはいえ施工方法は簡単であるため、価格は安い特徴があります。ただし火災時は有毒ガスが発生する可能性が高い点が大きなデメリットともいえる断熱材です。 | 価格は1㎡あたり600~2,500円程度 |
フェノールフォーム(発泡プラスチック系断熱材) | フェノール樹脂に発泡剤と硬化剤を加えて加工した断熱材です。フェノール樹脂とはフェノールとホルムアルデヒドを原料とした人工合成プラスチックのことです。熱で硬化することから耐火性能が高く、熱伝導率も低い特徴を持ち合わせています。ただし費用は高額であるために住宅で使用されることは少ないです。 | 価格は1㎡あたり2,500~6,000円程度 |
注文住宅の断熱材に関するQ&A
ここでは注文住宅の断熱材に関するQ&Aを紹介します。
断熱材にはたくさんの種類があり、どれを選んで良いか悩む方も多いのではないでしょうか。また断熱材は家全体を施工するため、コストも安くはありません。ここでは断熱材の費用を抑えるための方法を紹介します。
断熱材の費用を抑える方法はありますか?
先ほど伝えた各断熱材の価格を見てわかる通り、グラスウールが断熱材の中で最もコストを抑えることが可能です。グラスウールの価格が安いからといって断熱性能は低いとはなりません。どの建築会社でも取り入れている断熱材であるからこそ、プロからも認められている断熱材といえるでしょう。とはいえ、他の断熱材の方が性能は高いのではという声も少なくありません。もちろん価格の高いセルロースファイバーや炭化コルクの性能は非常に高いです。しかし全部屋に使用すると莫大なコストとなるため、用途範囲を定めて使用しましょう。断熱材の費用を抑えるためには、使用する断熱材を適材適所決めることが大切です。グラスウールだけにすれば費用を抑えられることは確かですが、より断熱性能を高めたい部屋もあるのではないでしょうか。その場合に備えて使用する断熱材を決めておくようにしましょう。
サティスホーム本社営業部長:小林大将
2級建築士と宅地建物取引士の資格を取得後、サティスホームで現場監督を10年経験。携わらせて頂いたお客様は200棟以上。その後、本社営業部長としてお客様の家づくりをお手伝いさせて頂いてます。