3階建て以上の住宅を建築する際にエレベーターを取り入れるか一度は悩む方も多いのではないでしょうか。2階建てであれば慣れている方も多い一方、3階以上となると階段で上るのも一苦労でしょう。そのため出来ればエレベーターを設置して楽に上り下りしたいと考える方もたくさんいらっしゃいます。とはいえエレベーターの価格は高いというイメージは払拭しきれません。本記事ではホームエレベーターの設置費用を紹介します。またホームエレベーターのメリット・デメリットも重ねて解説するため、導入で悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
注文住宅のホームエレベーターの設置費用と相場
ホームエレベーターの設置費用はおおよそ「3,000,000円~6,000,000円」前後となります。もちろんエレベーターの大きさやグレードによって価格は異なるため、目安としておきましょう。
ホームエレベーターの設置費用の内訳
エレベーターの設置費用の内訳には「本体価格」「設置費用」「申請費用」の3つに分かれます。
● 本体価格
本体価格はおおよそ「2,500,000円~5,000,000円」前後です。本体価格はサイズや住宅の構造によって異なります。サイズに関しては2人や3人用よりも、車椅子が乗り入れできる大きいエレベーターの方が価格は高くなります。また木造住宅に設定する方がRC造より強度性や耐久性を強化する必要があるため、コストが高くなります。そのほか階層が高いほど昇降場所が増えるため、コストが増額する要因にもなります。
● 設置費用
設置費用はおおよそ「400,000万円~600,000万円」前後です。もちろん設置を依頼する業者によって価格は異なります。大手ハウスメーカーで設置するより工務店の方が企業側の利益率が低いため、コストは安くなる傾向にあります。
● 申請費用
エレベーターを取り付ける際は建築確認申請を行う必要があり、申請費用が発生します。建築確認申請とは建築基準法に則った建物・設備であるかの確認を行うための申請です。新築住宅建築時にホームエレベーターを導入する場合、住宅の建築確認申請と同時に行い、おおよそ数万円程度の費用が必要です。費用に関しては都道府県によって異なるため、詳しくは行政または設計士へ確認しましょう。
ホームエレベーターのランニングコスト
ホームエレベーターのランニングコストはおおよそ「400,000円~750,000円」前後となり、以下の項目が必要となります。
● 電気代
電気代は1日5往復~10往復前後で500円~800円ほどとなるため、年間に換算すると「182,500円~292,000円」となります。ただしエレベーターを設置する場合は電力(
アンペア数)を高くしなければいけないため、基本料金は更に高くなる傾向にあります。そのため家庭の電気料金も高くなる点は注意して下さい。
● オイル交換代金
油圧式のエレベーターを設置した場合、5年前後でオイル交換が必要となり、おおよその費用は5万円です。1年間に換算すると1万円です。
エレベーターには「油圧式」と「ロープ式」があり、油圧式は油の圧力でエレベーターを稼働させる方式です。一方、ロープ式はワイヤーロープを使用します。近年のエレベーターはほとんどロープ式です。
● メンテナンス費用
エレベーターは定期的なメンテナンスが必要です。メンテナンスに関しては後ほど詳しく紹介しますが、年間50,000円~80,000円前後です。
● 固定資産税
エレベーターは固定資産に該当するため、毎年固定資産税の課税対象となります。固定資産税は固定資産税評価額に1.4%を掛けた値となります。固定資産税評価額は本体価格の50%~60%となるため以下の価格を目安としてください。
本体価格 | 固定資産税 |
2,500,000円 | 2,500,000×50%×1.4%=175,000円 |
5,000,000円 | 5,000,000×60%×1.4%=420,000円 |
また固定資産税は年々資産価値の下落に伴い安くなります。
注文住宅のホームエレベーターの選び方
ホームエレベーターは設置費用だけでなく、ランニングコストも高額です。そのためホームエレベーターの設置を諦めようと思った方も多いのではないでしょうか。確かに費用は高額ですが、その前に費用対効果が見込めるか検討する必要があります。そのためここではホームエレベーターメリット・デメリットを紹介します。
ホームエレベーターのメリット
ホームエレベーターのメリットは以下の4つが挙げられます。それぞれ詳しく解説します。
1. 上り下りが楽になる
2. 重い荷物を運ぶことが可能
3. 車椅子の人も一人で上の階層へ行ける
4. 一度に複数人登れる
上り下りが楽になる
エレベーターでのメリットで最な用途と言える点でしょう。特に年齢を重ねると年々階段の上り下りも大変になります。その際エレベーターがあれば苦労なく上層階へ行くことが可能となります。
重い荷物を運ぶことが可能
2階や3階へ重たい荷物を運ぶ際にエレベーターは非常に便利です。階段で運ぶには重すぎる荷物であってもエレベーターがあれば簡単に運ぶことができます。
車椅子の人も一人で上の階層へ行ける
足が不自由で車椅子の方であっても、エレベーターがあれば2階や3階へ移動することが可能です。本来同居している方に手伝ってもらいながら階段を上りますが、エレベーターを設置することで一人で移動が可能となるでしょう。
一度に複数人登れる
エレベーターが3人用や4人用などであれば一度に複数人登ることも可能です。友人を招き入れる時や家族で上の階層へ行くときは非常に便利です。エレベーターがあれば当たり前となりますが、日常生活では大きな利点となるでしょう。
ホームエレベーターのデメリット
一方ホームエレベーターにもデメリットがあります。ここでは5つのデメリットを紹介します。
1. 設置コストがかかる
2. ランニングコストが高い
3. 騒音が発生する
4. 部屋全体が狭くなる
5. 地震発生時は止まる可能性も高い
設置コストがかかる
先ほどもお伝えした通り、ホームエレベーターには設置コストが発生します。設置費用もかなり高額であり、新築住宅の場合はキッチン・お風呂・洗面化粧台のグレードを全て挙げることが可能なほどの費用です。そのためエレベーターを設置する際は予算を十分検討し、他の住宅仕様のグレードを挙げるか、ホームエレベーターを設置するか考慮しましょう。
ランニングコストが高い
ホームエレベーターのランニングコストは電気料金の他にメンテナンス費用や定期点検費用などが発生します。年換算にすると非常に大きな金額であり、10年もすればもう一台のエレベーター分ほどの費用にもなります。
騒音が発生する
近年のエレベーターは従来品より音を抑えた商品が増えたものの、それでも騒音は発生します。特に深夜帯は他の家族がエレベーターの音で起きてしまう可能性も高いため、夜間は使用できなくなる可能性も高まります。
部屋全体が狭くなる
エレベーターを設置すると他の間取りが小さくなるデメリットが挙げられます。更に1階だけでなく、2階3階も同様にエレベーターのスペースが必要となります。エレベーターを設置する際は、十分な部屋の大きさを確保できるか判断してからにしましょう。
地震発生時は止まる可能性も高い
エレベーターは地震が発生すると緊急停止するような仕様となっています。もちろん小さな地震であれば止まりませんが、震度4以上や緊急地震速報が発生した時は動かなくなり、エレベーター内に閉じ込められることにもなるでしょう。
ホームエレベーターの種類
先ほどもお伝えした通り、ホームエレベーターには「油圧式」と「ロープ式」の2種類に分かれます。さらに2種類を細分化すると以下の4つに分けることができます。
<油圧式エレベーター>
直接式 | 電動ポンプでタンク内の油圧を操作する方法です。シリンダー内のブランジャーを上下させることにより昇降させることが可能となります。 |
間接式 | 操作方法は直接的と同じですが、ブランジャー頂部の網車とロープを間接的に昇降させる方法です。 |
<ロープ式エレベーター>
トラクション式 | ロープの一端をかごに取り付け、他端をつり合いおもりに締結して綱車とロープ間の摩擦により稼働させる方法です。 |
巻胴式 | かごに結ばれたロープを巻胴で巻取り、巻戻して昇降させる方法です。 |
ホームエレベーターの設置場所
ホームエレベーターは間取りに合わせて好きなところに設置することが可能です。もちろん間取りに影響がないように配置しなければいけませんが、使い勝手が悪ければ意味がないでしょう。ここではおすすめできるホームエレベーターの設置場所を3つ紹介します。
1. リビング
2. 玄関前
3. 廊下
リビング
リビングは最も家族が集まる場所であり、家の中心と言っても過言ではありません。家の中心にエレベーターがあれば利用しやすいため、リビングに設置している家庭も多いです。ただし、リビングで何か作業している時はエレベーターの音が気になることもあります。そのため音問題を考慮して次で紹介する2つの場所に設置している家庭もいらっしゃいます。
玄関前
玄関前に設置することで、自宅へ帰ってきた時にすぐに2階3階へ行くことが可能なメリットがあります。重たい荷物などを購入してきた時は非常に便利です。ただし、玄関前に設置すると、エレベーターから降りた時に来客者と鉢合わせになる可能性も高いです。
廊下
玄関前では来客者の目もあることから廊下に取り付ける家庭もいらっしゃいます。廊下であればリビングに居る方への音問題を配慮でき、来客者と鉢合わせすることもありません。
ホームエレベーターの工期
新築住宅時に取り入れるホームエレベーターの工期は建物の工事と並行して行われます。建物はおおよそ3か月~4か月で完成するため、ホームエレベーターも同様の工期と認識しておきましょう。
>ホームエレベーターのメンテナンス
ホームエレベーターは定期的なメンテナンスを行わなければ故障が発生しやすくなります。
また建築基準法でメンテナンスが下記の通り義務付けられています。
● 法第8条(維持保全) 第8条 建築物の所有者、管理者又は占有者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなければならない。
● 建築基準法第12条3項報告、検査等により専門技術を有する資格者に調査・検査をさせ特定行政庁へ報告する必要がある。 |
ホームエレベーターのメンテナンスを行い、行政へ提出しなければいけません。もちろん義務だけでなく、ホームエレベーターを長持ちさせるためにも必要です。メンテナンスをしないままにすると、場合によってはエレベーターの交換をしなければいけないことにもなりかねないため、専門業者へ依頼するようにしましょう。ここでは専門業者によるメンテナンス方法と費用を紹介します。
メンテナンス方法
エレベーターのメンテナンスは下記の3項目を行います。
1. 定期検査報告
2. 性能検査・定期自主検査
3. 保守点検
● 定期検査報告
定期検査報告は建築基準法第12条で定められた特定行政庁へ報告する書類作成のために行われます。エレベーター本体と各設備、防火設備などの検査を行います。万が一行わなかった場合、100万円以下の罰金を支払う可能性も高くなります。
● 性能検査・定期自主検査
エレベーターの荷重が1トン以上の場合に行います。ホームエレベーターの場合はほとんど該当しませんが、「外観試験」「動作試験」「荷重試験」の3つの試験をクリアする必要があります。
● 保守点検
保守点検は建築基準法第8条に規定されている項目ですが、義務付けられているわけではなく、罰金もありません。保守点検は専門業者による動作確認と不備確認、交換部品の確認などを行います。
メンテナンス費用
毎月の保守点検と年に1回の定期検査報告を専門業者へ依頼した場合、おおよそ「30,000円~50,000円」の費用が発生します。もちろん専門業者によって価格は異なります。またメーカーへメンテナンスを依頼した場合、専門業者より多少割高になる傾向にあります。さらに訪問だけで費用が発生するケースもあるため、専門業者に依頼することがおすすめです。
注文住宅にホームエレベーターを設置する場合の注意点
ホームエレベーターを設置する場合は以下の点を注意しましょう。
建築予算がオーバーしないか
ホームエレベーターの費用は非常に高額であり、場合によっては建築予算をオーバーする要因にもなりかねません。建築予算は基本的に住宅ローンの借入限度額にしている方も多いです。予算オーバーすると住宅ローンで借入できないため、自己資金を捻出しなければいけない状況にもなりかねないでしょう。そのため予算を十分考慮した上で設置を検討しましょう。
本当に必要か
エレベーターを設置したものの、ランニングコストが大きいために使用しなくなったという家庭も多いです。電気代金だけでなく、定期的点検や保守点検に係わる費用も高額であるため、使用していないという方もいらっしゃいます。そのためホームエレベーターを設置する際は本当に必要であるか見極める必要があるでしょう。
注文住宅のホームエレベーターに関するQ&A
ここではホームエレベーターに関するQ&Aを2つ紹介します。ホームエレベーターはコストが高額であるために、少しでも安く設置したいという方もいらっしゃるでしょう。また建築予算の兼ね合いから後付けしたいという方もいらっしゃいます。それぞれの疑問点について解説します。
ホームエレベーターの設置費用を抑える方法はありますか?
ホームエレベーターの価格の中で最もウエイトが大きいのは「本体価格」です。本体価格はサイズやメーカーによって価格が大きく異なります。大手メーカーであるほど商品グレードは高い一方、最低限のエレベーターであれば安いメーカーを選ぶ方が良いでしょう。また3人家族や4人家族であれば2人用のサイズでも十分な大きさです。無理に大型を選びコストを高めないように注意することで、安い商品を選ぶようになります。
ホームエレベーターをリフォーム時に設置することはできますか?
ホームエレベーターはリフォーム時に取り付けることは可能です。ただし、既存住宅に設置するということは他の部屋を壊して取り付けることにもなります。建物の一部解体や資材の撤去なども別途必要となるため、新築時に設置するより価格は高くなってしまいます。また建物の構造によってはエレベーターが設置できないこともあります。木造住宅で最も建築されている2×4工法はリフォームができません。壁などを壊してしまうと耐力壁がなくなり、建物が倒壊する恐れがあるためです。自身の住宅の工法が分からない方は、一度設計士に建物を見てもらってからリフォーム時にエレベーターを取り付けるか検討するようにしましょう。
サティスホーム本社営業部長:小林大将
2級建築士と宅地建物取引士の資格を取得後、サティスホームで現場監督を10年経験。携わらせて頂いたお客様は200棟以上。その後、本社営業部長としてお客様の家づくりをお手伝いさせて頂いてます。