注文住宅の建築を考える方の多くは土地探しからです。しかし土地を購入することは人生で一度あるか程度であるため、相場価格というのがわからず、安いのか高いのか判断できない方も多いのでしょうか。さらに注文住宅の建築費も合算すると、非常に大きな金額となります。そのため少しでも土地を安く購入したいと思う方も多いのではないでしょうか。本記事では土地を安く購入する方法について解説します。これから土地を購入する予定の方はぜひ参考にしてください。
土地を安く買う方法①相場について
購入する土地が安いのかを判断するには、「相場価格」を理解しておかなければいけません。ここでは相場の確認方法とチェックする募集資料の備考について解説します。
相場価格とは
土地の相場価格とは、実際に売買された価格の平均を指します。同じ土地が売却されるケースは少ないため、近隣エリアで平均価格を算出します。エリアは「県」や「区」、「市町村」ではなく、〇〇丁目などで区切って計算することが多いです。しかし〇〇丁目でもスーパーや病院が近いエリア、車で10分かかる場所では価格が大きく異なります。また土地の売買を生業としている不動産会社によって相場価格は異なります。A社は一坪当たり50万円と言うのに対し、B社は40万円と言うケースもあります。仮に100坪の土地の場合、A社とB社では1,000万円も販売価格が異なってくるのです。相場価格はあるように感じますが、明確な定義や基準は定められていません。そのため実際の取引事例を確認し、自身で相場価格を見極めることが大切です。
実際の取引価格を調べる方法
国土交通省のホームページにある土地総合情報システムでは実際に取引された事例を確認することが可能です。ここでは利用方法を紹介します。
サイトを開いていただくと、以下の画像が表示されるため、左上の「不動産取引価格情報検索」をクリックしてください。
「不動産取引価格情報検索」をクリックすると都道府県を選択する画面に移行します。調べたい都道府県を選んで下さい。
一例として三重県を選ぶと、以下の画面に移行します。画面では三重県庁周辺となっていることがお分かりになるでしょうか。
数字が記載されている場所は、実際に取引があった場所です。
一例として赤矢印の箇所をクリックすると「詳細表示」と表示されます。さらに詳細表示をクリックすると、左側に売買された土地の概要が表示され、1㎡当たりの価格を見ることができます。
なお不動産業界では土地の価格は坪単価でやりとりします。「1㎡=約 0.3025 坪」上記の例では1㎡当たりの価格62,100円です。坪単価に直すと20万5,000円であることがわかります。調べたいエリアがある方は、上記のサイトを使えば坪単価の算出が可能となります。相場価格を調べたい方はぜひ利用してみてください。
募集資料の備考を確認
相場価格以外にも募集資料の備考を確認しておきましょう。備考には土地の条件などが記載されております。建物が建築できる建ぺい率や容積率、用途地域などを確認してください。
● 建ぺい率・・・敷地面積に対して建築できる面積割合(1階の建築面積)例えば200㎡の土地の建ぺい率が40%の場合、建築できる1階部分の面積は80㎡までとなります。
● 容積率・・・敷地面積に対して建築できる延べ床面積の割合(1階・2階など全フロアの合計面積)例えば200㎡の土地の建ぺい率が80%の場合、建築できる延べ床面積は160㎡となります。
● 用途地域・・・以下の表の通り全部で13種類あり、工業専用地域以外は建築可能です。ただし商業系は防火対策などを行う必要があるため、建築費が割高になります。
住居系 | 商業系 | 工業系 |
● 第1種低層住居専用地域 ● 第2種低層住居専用地域 ● 第1種中高層住居専用地域 ● 第2種中高層住居専用地域 ● 第1種住居地域 ● 第2種住居地域 ● 準住居地域 ● 田園住居地域 |
● 近隣商業地域 ● 商業地域 |
● 準工業地域 ● 工業地域 ● 工業専用地域 |
上記の他にもさまざまな内容が記載されています。中には「そもそも建築できない」「建築するには土地代金以外に費用が必要」などの項目が別の表記で記載されています。それらの土地は相場価格より安い金額で売り物件となっているため注意が必要です。実際どのような内容があるかは次の項で紹介します。
土地を安く買う方法②相場より安い土地について
相場価格より安い土地は、何かしら理由があって安くなっていることが多いです。実際どのような事例があるかここで紹介します。
土砂災害警戒区域
土砂災害警戒区域により、擁壁や防護壁などの工事が追加となるため、相場価格より安く設定している場合があります。土砂崩れなどによる災害リスクを抑えるため、「建物に土砂が届かない」「建物への被害が届かないようにする」工事です。工事内容によるものの、数百万円〜数千万円にもなる工事です。そのため相場価格では土地が売れないため、価格を安く設定していることがあります。
解体工事費費用がかかる
更地だけでなく、建物付きのまま売りに出されている土地もあります。現状のまま土地を購入する場合、解体費用は買主が支払います。もちろん購入前に「売主で解体してほしい」と交渉することも可能ですが、売主からしたら手間と費用がかかってしまいます。そのため解体費用を含めて安いのかを判断しなければいけません。さらに2022年4月1日の法改正により解体工事の際のアスベスト調査が義務化されました。解体する建物の床面積の合計が80㎡以上の場合、アスベスト含有の建材が使われていないかを都道府県に報告しなければいけません。アスベスト調査は建物の規模によるものの、数十万円程度の費用が発生します。解体費用やアスベスト調査費用を考慮しても相場価格より安くなるかを判断して購入しましょう。
接道がない
建物を建築するためには、最低限2m以上の道路に接している必要があります。接道は建築確認申請を行うための必須条件です。接道がないと建物は建築できませんが、それでも売り土地として情報掲載されていることがあります。
水道が引き込みされていない
土地に水道が引き込まれていない土地は、相場価格より安くなる傾向にあります。水道の引き込みは本管からの距離で工事費が反映されます。本管から引き込む距離が長いほど、配管距離、掘削、道路の補修工事が加算され高くなります。そのため水道が引き込み工事に莫大な費用が掛かる際は、相場価格より安い傾向にあります。水道の引き込み工事は数十万円の費用もあれば、500万円1,000万円にもなることがあります。さらに、募集資料の備考に掲載されていない場合もあるため、事前に水道局で確認しておきましょう。
隣地などに問題がある
隣地がクレーマーなどの問題がある人の場合、相場価格より安くなることがあります。基本的に土地を購入するうえで隣地の方と関わることはありません。しかし土地の杭が未確定の場合、隣地の方と協議して境界確定を行わなければいけません。その際、「クレーム」や「境界確定に同意しない」「同意する代わりに金銭を要求してくる」というケースもあります。良い場所の土地であっても、人的要因で価格が安くなっていることもあります。募集資料の備考欄にも記載されていないため、購入前に不動産屋に確認しておくことが大切です。
土地を安く買う方法③値引き交渉のコツについて
ここでは土地の価格を値引きする交渉方法と安く購入する方法を紹介します。
買い付け証明書で指値をする
不動産を購入する際は、不動産会社を経由して売主へ買付証明書を提出します。買付証明書には買主の「氏名」「住所」などの他に、「希望購入価格」を記載することができます。例えば売り物件として掲載されている土地の値段が2,300万円であったとしても、希望購入価格を2,000円で提示することができます。これを指値と言います。指値した価格に対し、売主が同意できれば値引き交渉成立です。ただし異常な指値価格を提示すると、売主に対して失礼に当たることにもなりかねないため、事前に仲介する不動産会社へ相談しておくことをおすすめします。
仲介手数料の交渉を行う
土地の売買の仲介を行う不動産会社へ仲介手数料の交渉をすることが可能です。仲介手数料は土地の売買代金に対して以下の計算式で算出できます。
仲介手数料=(土地の売買代金×3%+6万円)×消費税 |
例えば2,000万円の土地の場合、仲介手数料は72万6,000円となります。仲介手数料の計算式は各不動産会社によって異なるものの、国土交通省で定めたガイドラインに則った上記の計算式で算出します。もちろん不動産会社によっては3%ではなく1.5%という場合もあります。しかし売主から依頼された不動産会社が仲介することと決まっています。そのため不動産会社に仲介手数料を交渉しても、値引きされないこともあるということです。
不整形地を購入する
不整形地は整形地より価格が安いという特徴があります。正方形や長方形などの整形地であれば建物の間取りの自由度が高いため人気があります。一方三角形や台形などの不整形地は土地の形状に合わせた間取りを検討しなければいけません。より安く土地を購入したい方は不整形地を探しても良いでしょう。
空き家バンクを利用する
空き家バンクは営利目的で行っていないため、仲介手数料が発生しないメリットがあります。さらに相場価格より安い特徴があります。そのため空き家バンクを利用して土地を探している方も多く、競争率も高いです。とはいえ安く購入したい方は、登録して見てみましょう。
土地を安く買う方法④税金について
土地を購入する際は、土地代金とは別に以下の税金が課せられます。ここでは税金の内容と計算方法について紹介します。
登録免許税
登録免許税とは、土地の所有権に関する変更がある際に課せられる税金です。例えば、「土地を購入した時」「土地を相続・贈与した時」「土地を担保として金融機関から融資を受けた時」が挙げられます。登録免許税は土地の固定資産税評価額に税率を掛けた金額を納税します。固定資産税評価額とは、固定資産税などの税金を計算する際の指標となり、毎年納税する固定資産税納税通知書に記載されております。税率は名義変更の事由によって以下の表の通りとなります。
● 土地の登録免許税
名義変更の事由 | 税率 |
相続 | 0.4% |
贈与 | 2% |
売買 | 2%(令和5年3月31日までは1.5%) |
例えば2,000万円の固定資産税評価額の土地を購入した場合、「2,000万円×1.5%=30万円」となります。登録免許税は土地を購入し、所有権を法務局に移転する際に納税します。ただし納付方法は法務局ではなく金融機関などで手続きするため、間違えないように注意してください。
印紙税
土地を購入する際に締結する売買契約書に印紙を添付して納税します。印紙代は売買金額によって以下の表の通り定められています。
買契約書を締結する。契約印紙は売買代金によって下記の通り定められている。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率
(平成26年4月1日から令和6年3月31日までの間に作成されるもの) |
10万円を超え 50万円以下のもの | 400円 | 200円 |
50万円を超え 100万円以下のもの | 1千円 | 500円 |
100万円を超え 500万円以下のもの | 2千円 | 1千円 |
500万円を超え 1千万円以下のもの | 1万円 | 5千円 |
1千万円を超え 5千万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
5千万円を超え 1億円以下のもの | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え 5億円以下のもの | 10万円 | 6万円 |
5億円を超え 10億円以下のもの | 20万円 | 16万円 |
10億円を超え 50億円以下のもの | 40万円 | 32万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 | 48万円 |
出展:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」
売買契約書は売主と買主が1通ずつ保有するため、2通作成します。売主と買主は1部ずつ印紙を用意しておきましょう。
不動産取得税
土地を購入した方は不動産取得税を納税しなければいけません。不動産取得税とは、土地や建物を取得した人に課せられる税金です。土地を購入した際は、「固定資産税評価額×4%」の金額を納税します。2024年3月31日までは軽減税率が適用されるため、税率は3%となっています。さらに住宅用地を購入した場合、以下の軽減措置が適用できます。
住宅用地を取得する場合
・住宅用の土地を取得した場合は、次の(1)(2)のいずれか高い方の額を土地の税額から軽減します。
(1)150万円×税率
(2)土地1m2当たりの価格×住宅の床面積の2倍(1戸当たり200m2を上限)×税率
ただし、土地を取得した日から一定の期間内に、その土地の上に住宅が新築されているなどの一定の要件を満たすことが必要です。
なお、例えば東京都の平均的な一戸建住宅の場合2021(令和3)年)は、住宅の評価額が1,063万円(床面積は98.9m2)で、住宅用地は144.1m2であるため、特例が適用されて実質非課税となります。
引用:総務省|地方税制度|不動産取得税
不動産取得税は土地を購入してから数か月後に所有者へ納税通知が届きます。納税することを忘れると延滞税などのペナルティが課せられるため、忘れないように注意しましょう。
土地を安く買う方法⑤住宅会社に依頼する
土地を不動産屋に頼むと、単に土地の売買手続きを行うだけで、その後の家の建築や設計については関与しません。一方、住宅会社に土地を頼むと、下記のようなメリットがあります。
・非公開情報を教えてくれる場合がある。
・土地探しから建設、設計、施工、アフターサービスまでトータルでサポートしてくれるため、よりスムーズで安心な家づくりができる。
・土地探しから住宅設計まで一括して行うことで、より効率的なプランニングが可能となり、予算や希望に合った家を建てることができる。
・住宅会社が持つ技術力やデザイン力を活かして、お客様の要望に応じたオリジナルの住宅を提案してもらえる。
そのため、土地と家を一緒に考える場合の土地探しは、住宅会社に頼むことをおすすめします。
土地を安く買う方法まとめ
今回は土地を安く購入する方法について解説しました。土地を購入する際は相場価格を事前に調べておくことが大切です。価格を調べないと、高い土地を購入することにもなりかねません。土地総合システムで確認しておきましょう。また、少しでも安く購入したい方は「指値交渉」や「仲介手数料の交渉」を行いましょう。もちろん相手の同意があってのことであるため、無理のない範囲の価格で交渉しましょう。さらに土地代金以外に発生する費用がないかのチェックも怠らず、なおかつ税金の計算を行っておくことをおすすめします。土地と家を一緒に考える場合は、住宅会社に相談すると安心です。
サティスホーム本社営業部長:小林大将
2級建築士と宅地建物取引士の資格を取得後、サティスホームで現場監督を10年経験。携わらせて頂いたお客様は200棟以上。その後、本社営業部長としてお客様の家づくりをお手伝いさせて頂いてます。