注文住宅を建てる計画の中で「畳にはデメリットしかない」という意見を聞くことがありますが、本当に畳にはデメリットしかないのでしょうか。
本記事では、畳にはデメリットしかないとされる理由を紹介するとともに、畳だけが持つメリットも紹介します。
加えて、畳を選択する場合に注意しておきたい点や、悩んでしまう畳とフローリングの比較、中間の案としての「置き畳」のメリット・デメリットといった項目についても解説します。
和室や畳スペースを設けるべきなのか、迷っている方はぜひ最後までご覧ください。
畳はデメリットしかない?その理由とは?
はじめに、どうして「畳にはデメリットしかない」と指摘されることがあるのでしょうか。
これから紹介する10個の理由を確認してみましょう。
畳と畳のすき間にゴミが入り掃除が大変
畳はい草などの細い繊維を編み込むことで作られます。繊維と繊維のあいだにはすき間があることから、ホコリや髪の毛といった汚れが溜まりやすく、掃除が大変であると指摘されます。
また、畳と畳、畳とフローリングの境目にもホコリが落ちることもあり、衛生面から畳を敬遠する人もいるようです。
定期的に畳を干す必要がある
畳の繊維は徐々に湿気を吸収することから、定期的に畳を持ち上げて干す作業が必要になります。
畳スペースや和室の大きさにもよりますが、一定の重量がある畳を干すためには時間と労力が必要です。
こうしたメンテナンスが必要である点もデメリットに数えられます。
畳の細かいすき間にカビ・ダニが繁殖する
掃除や定期的な乾燥を行わない場合、すき間にカビやダニが繁殖する可能性もあります。
カビやダニはアレルギーを引き起こす原因となることもあり、健康に悪影響を及ぼすことも。
特に子どものいる家庭では、カビやダニが気になることでしょう。
カビ・ダニが気になって洗濯物の部屋干しがしづらい
カビやダニの発生には、一定の温度とともに高い湿度が必要です。
雨天時には、カビやダニが発生することを嫌って、洗濯物の部屋干しがしづらくなることもあるでしょう。
コインランドリーなどの施設を利用することになり、洗濯の手間が増えるかもしれません。
畳の裏側にシロアリがいるケースも
カビやダニに加えて、畳の裏側がシロアリの食害に遭っていたケースも報告されています。
種類によりますが、シロアリは一定以上の湿度を好むようです。
畳に対して定期的な掃除や乾燥といったメンテナンスを行わない場合、シロアリが繁殖し畳だけでなく床下の木材が被害に遭う可能性もあります。
へこむため家具を置きづらい
畳はフローリングなどとは異なり、柔らかい繊維で形成されています。タンスや机といった家具を置くと”へこみ”が生じることがあります。
収納を増やそうと家具を置きたいと思っても、つい”へこみ”が気になって、畳を選択したことを後悔するかもしれません。
畳が現代の住宅のイメージに合わない
畳のある和室は日本の伝統的な住まいの間取りのひとつです。
シンプルモダンな内装や大理石調のホテルのような住まいにおいては、和室の持つ日本的な雰囲気が合わない可能性があります。
外観・内装のデザインを統一したい方は畳を敬遠することもあるでしょう。
部屋の雰囲気を変えたくても変えづらい
畳の部屋は部屋の雰囲気を一新しづらい点もデメリットに挙げられます。
フローリングであれば、床にラグやカーペットを敷いたり交換することで簡単に模様替えできます。
一方で畳の上には一般的にはカーペットなどを敷くことはありません。畳の通気性が悪くなることから、カビやダニの繁殖を助長する可能性があるからです。
表替えなどで色味を変えることはできますが、それでも畳ならではの雰囲気は変えられないでしょう。
畳の表替えや新調に費用がかかる
畳は使用するごとに繊維が傷つき、ほつれや繊維の破れが生じることがあります。
このため畳の表面部分である畳表(たたみおもて)を交換したり、畳の本体部分である畳床(たたみどこ)を交換する必要があります。
畳表は3~5年で、畳床は10~20年ほどで交換時期を迎えるため(使用環境によって交換時期は大幅に変わります)、メンテナンスや交換に費用を要するでしょう。
新築時の建築費用が高額になる
畳はメンテナンスや交換にも費用がかかりますが、新築住宅に設ける場合は一般的にはフローリングよりも施工費用が高くなります。
建物にかけられる予算が限られる場合や、建築後に手元に資金を残しておきたい場合は、和室や畳スペースが費用を削減する対象となる可能性があります。
和室など、畳のある部屋を一戸建てでも受ける場合、ここまで紹介した10項目のデメリットを感じる可能性があります。
特にカビ・ダニといった健康被害を及ぼす可能性は避けたいもので、畳のある部屋を設ける場合は、掃除や乾燥の手間は避けられないでしょう。
畳のメリットについても正しく確認する
畳についてのデメリットをたくさん紹介しましたが、畳には畳にしかないメリットも豊富にあります。
これから紹介するメリットも把握したうえで、畳を利用するかどうか検討してみましょう。
柔らかいため子どもが遊ぶときも安心できる
細かな繊維が集まってできている畳は、フローリングなどの他の床材と比較してトップクラスの柔らかさを誇ります。
子どもが遊ぶとき、倒れて手足や頭を打つことが心配になる場合もありますが、和室で遊んでくれれば、万が一倒れたときでもケガを最小限に抑えられるでしょう。
柔らかいため高齢者が使うときも安心できる
畳の柔らかさは子どもだけでなく、高齢者にとっても安心できるものです。
足腰が弱くなると、日常生活を送る中でつまづくこともあるでしょう。
畳敷きであれば、倒れた際の衝撃が緩和されて、ケガの程度が小さくなります。
空気を含んでいるため、夏涼しく冬暖かい
い草などの繊維でできている畳は、すき間にたくさんの空気を含んでいます。
空気は熱が伝わることを防ぐ効果を持つため、畳から体へと熱が伝わることを防いでくれます。
結果として夏場は畳の上で涼しく過ごすことができ、冬場は冷気を感じづらく暖かく過ごせるでしょう。
い草の香りでリラックス効果を期待できる
い草など天然素材でできている畳は、畳ならではの独特の香りを放ちます。
乾燥した牧草のような香ばしい香りには、フィトンチッドと呼ばれる鎮静作用を持つ成分も含まれているとされていて、香りを嗅ぐだけでリラックス効果を感じられるでしょう。
ちょっと昼寝する場所として便利に利用できる
和室など畳のある部屋には「横になることができる」という特徴的な機能があります。
リビングやダイニングではゴロンと横になることはできず、ベッドは入浴後でなければ使いづらいもの。
一方で和室はいつでも気軽に寝られる貴重なスペースといえます。
洗濯物をたたむ・アイロンするときに便利
畳がある場所は子どもが遊んだり横になったりといった機能のほか、洗濯物を畳んだりアイロンをかけたりといった目的でも利用できる、非常に多目的な空間です。
30cmほど段差を作る”小上がり”にすることで、ソファと同じように腰掛けるスペースとしても利用でき、工夫次第でさらに可能性の広がるスペースといえるでしょう。
来客があった場合に客間として利用できる
ほかにも、畳のある部屋は来客があった場合に客間としても活用できます。
来客用の布団さえ準備しておけば、普段は子どもの遊び場や洗濯物を畳むスペースとして活用し、来客時だけ客間として利用することもできます。
1つの空間を多くの目的で利用できるため、コンパクトな敷地・住まいにもおすすめの間取りといえるでしょう。
「畳にはデメリットしかない」と指摘されることがある一方で、実は紹介したとおり様々なメリットも畳のある部屋にはあります。
メリットとデメリット、双方を把握したうえで畳の利用を決めてみましょう。
畳を選ぶ際の注意点
ここからは畳のある家を選択する場合に検討しておいた方がよい事柄を紹介します。
建築後は行いづらいこともあるので、必ず事前に確認しましょう。
何のために畳(和室)を設けるのか明確にする
最も大切なことは、何のために和室など畳のある部屋を設けるのかを明確にすることです。
畳の部屋は多用途である一方で、逆になくてもよい部屋になるケースがあります。
特にリビングやダイニングに隣接していない和室は、明確な目的がなければ普段使いされない空間になることも。
使用頻度が低い部屋は掃除の頻度も低くなり、カビやダニの発生につながることにもなりかねません。
畳のある部屋を設ける場合は、和室を使用する”イメージ”を明確に持ちましょう。
畳の素材は慎重に選択する(い草・和紙・樹脂など)
畳と聞くと、天然素材のい草をイメージする方が多いと思いますが、実は和紙畳や樹脂畳など、異なる素材を使用して作られるケースもあります。
和紙や樹脂の畳は耐久性がありカビやダニに強い特徴を持つ一方で、い草畳ならではの香りや柔らかさ、手触りといった特徴が失われています。
畳を設置することを決めたら、各素材の特徴を改めて確認したのちに、設置する場所や使用目的に合った素材を選択しましょう。
畳のデザインは慎重に選択する(色・サイズ・縁の有無など)
和紙や樹脂の畳は、い草の畳とは異なり、真っ白・真っ黒の色味や真っ赤な畳など、独特の色味を持つものがあります。
さらに畳は一般的な長方形ものから、正方形(いわゆる琉球畳)のものなど、様々な寸法のものが販売されています。
伝統的な畳に用いられている、畳のフチの有無やデザイン、色味も変更可能です。
畳の使用を検討したあとは、こうした細かな仕様についても検討を重ねましょう。
使用用途によってはロールスクリーンや建具を設ける
客間として畳のある部屋を利用する場合には、就寝時に備えて空間を分ける、引き戸やロールスクリーンの設置を検討しましょう。
音や光を遮断する目的では引き戸が最適ですが、頻繁に利用する訳ではない場合は、簡易的にロールスクリーンだけでも設置することをおすすめします。
家具を置く予定があるなら一部フローリングも考えて
和室は全面を畳にするイメージがありますが、将来的に家具を置く可能性がある場合は、一部分だけでもフローリングにしておくことをおすすめします。
一部フローリングであれば、家具を置くことのほか、傷を気にせずに室内物干しを置くこともでき、和室の利便性を向上させられるでしょう。
光がよく当たる場所の畳は色褪せを覚悟して
天然素材である”い草”の畳を利用する場合は、光がよく当たる場所では太陽光による色褪せが生じることを認識しておきましょう。
畳はグリーンというイメージを持つ人が多いもの。しかし光の当たる場所は脱色作用が強く、グリーンから小麦色まで簡単に色落ちします。
色落ちが気になる方は、窓際だけフローリング仕様にして、畳の色落ちを防ぐ工夫を加えましょう。
裏返しできないタイプもある点に注意
一般的に畳は古くなると、畳表を裏返したり畳表を交換したりして、畳本体である畳床は継続して使用されます。しかし、畳床の厚みが薄い薄畳や、畳のへりがない琉球畳といった畳は裏返しできないケースがあります。
畳が古くなれば交換が必要となり費用も高額になることから、畳を選択する場合は裏返しの可否についても確認しましょう。
畳の使用を決めたら、こうした注意点を確認しながら細かな仕様を決めていきましょう。
同じ場所に畳を配置する場合でも、仕様の選択で見た目も機能性も全く異なったものになります。
建築後は変更できないものも多いため、土地選びやハウスメーカー選びの段階で和室の利用目的を漠然と定め、細かな仕様を決めるときにしっかり考えて確定させましょう。
サティスホームでは…
「和室(タタミコーナー)を作りたい」というご要望があった場合、サティスホームでは、積水成型工業株式会社さんのカラー畳「セキスイ畳『MIGUSA』」をおすすめさせていただいております。
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- 水拭きできる
- 滑りにくい
- 色褪せしにくい
- 毛羽立ちしにくい
など、メリットがたくさん!見た目もお洒落でカラー展開も豊富です♪
畳とフローリングの比較
畳の特徴についてはよく分かりましたが、畳と比較されるフローリングとでは、どういった違いがあるのでしょうか。
両者の違いを分かりやすく表にまとめたのでご覧ください。
畳 | フローリング | |
見た目 | 伝統的な雰囲気 | 洋風ではあるがどんな家にもマッチする |
快適性 | 柔らかく疲れにくい 特有の香りでリラックス効果がある |
比較的硬い 足元からの冷えを感じることも |
費用 | 設置・交換とも比較的高い | 樹種により変動するが比較的安い |
メンテナンス | 定期的な清掃・乾燥が必要 水濡れに弱い |
容易に掃除できる 水濡れにも強い |
その他 | 防音効果が高い |
特定の部屋を畳にするべきか、フローリングにするべきか、双方の特徴を確認しながら決めていきましょう。
置き畳とは?メリットとデメリットについて
記事の終わりに、フローリングの上から置くだけで設置できる「置き畳」についても触れておきましょう。
気軽に設置できて撤去も容易な置き畳は、どういった特徴を持っているのでしょうか。
メリット:簡単に設置できて交換・移動も容易
置き畳の最大のメリットは、購入後に置くだけで簡単に設置でき、汚れたら交換するなど移動も容易であることです。
模様替えも簡単に行うことができ、部屋に合わないと思ったら撤去することもできます。
専門の業者を呼ばずに設置できるため、人件費がかからない点もメリットです。
メリット:デザインや種類が豊富にある
置き畳は設置撤去の手軽さから人気を博していて、現在ではホームセンターから通販まで様々な場所で入手可能です。
販売する店舗によって、素材や色味などのデザインが豊富で家の雰囲気に合った商品を簡単に見つけられるでしょう。
メリット:設置後のイメージを想像しやすい
通販で置き畳を購入する場合は、対象商品を取り扱うサイトに設置事例が掲載されているケースがほとんどです。
設置事例を確認することで、自宅に置き畳を置いた場合に、どういったイメージになるのか設置後のイメージを想像できる点も嬉しいポイントです。
メリット:比較的安価に導入できる
専門の業者の手を借りることなく設置できる置き畳は、比較的安価に導入できる点もメリットに挙げられます。
1枚からでも購入することも可能で、どういった雰囲気になるのか気軽に試すことができるでしょう。
デメリット:対策を取らないと滑ることも
通常の畳はフローリングの高さから畳の高さだけ段差を設けて、少しも動かないように設置されます。
一方で置き畳は自由に動ける状態であることから、下部に滑り止めなどを敷かなければ簡単に動いてしまいます。
動くことで畳の下のホコリが表に出てくることにもなるので、固定する方法を考える必要があるでしょう。
デメリット:床の傷に要注意
畳が動く場合は、床に傷がつくことも認識しておきましょう。
置き畳の下にホコリが入ることは避けられず、ホコリのある状態で体重がかかり置き畳が動くと床に傷がつきます。
特に無垢のスギやヒノキといった柔らかい素材を利用する場合は、置き畳による傷がたくさんつく恐れがあるので注意が必要です。
デメリット:カビの発生に注意が必要
フローリングに置き畳を置く場合は、特にカビの発生には注意が必要です。
一般的な畳は、畳の下部は合板や木材で作られており、吸放湿性を持っています。
一方のフローリングは吸放湿性を持っていないので、湿気などの環境が整うことでカビが発生する可能性があります。
気軽に置き剥ぎできる特徴を利用して、定期的な掃除をおすすめします。
まとめ:本当に畳はデメリットしかないの?
「畳はデメリットしかない」という指摘があることから、改めて畳のメリットとデメリットを中心に特徴について解説しました。
畳は、い草や和紙、樹脂といった繊維を細かく編み込むことで作られることから、細かなすき間が生まれます。
すき間には、湿気やホコリが侵入する可能性もあり、管理状態が悪いとダニやカビの温床となる恐れもあります。
こうした事態を避けるために、定期的に掃除や陰干しといった手間がかかります。
一方で畳には、フローリングにはない柔らかさや涼しく暖かな手触り、畳ならではの独特な芳香といったメリットが存在します。
気軽に横になったり、布団を敷くだけで客間になったりと非常に汎用性が高いところも特筆すべき点です。
「デメリットしかない」という指摘は間違いで、メリットもデメリットもあるため、特徴を把握したうえで適切に利用・管理することが大切といえるでしょう。
理想とする生活スタイルに畳が似合うなら、間取りのどこかに和室や畳スペースを設けて畳のある生活を楽しみましょう。
サティスホーム本社営業部長:小林大将
2級建築士と宅地建物取引士の資格を取得後、サティスホームで現場監督を10年経験。携わらせて頂いたお客様は200棟以上。その後、本社営業部長としてお客様の家づくりをお手伝いさせて頂いてます。