全館空調は家全体の温度を均等に保つことができる空調設備として人気です。しかし全館空調はいらないという意見も少なくありません。これから全館空調のマイホームを検討している方は、「どのような理由でいらない」と言われているのか事前に把握してから決めた方が良いでしょう。
この記事では全館空調はやめたほうがいいと言われる理由と全館空調のメリット・デメリットを紹介します。重ねて後悔しないためのポイントや注意点についても解説するため、これからマイホームを建築する方はぜひ参考にしてください。
全館空調をやめたほうがいい理由
全館空調はやめたほうがいいと言われる理由は主に以下の5つが挙げられます。コスト面以外に住環境なども関連してくるため、導入を検討している方は事前に確認しておきましょう。
電気代が高い
全館空調がやめた方がいいと言われる理由で最も多いのは「電気代が高い点」です。家全体の温度を均一にするために、継続的に稼働させる必要があるため、常に電気を使用していることになります。全館空調がない家庭ではエアコンなどで対応しますが、必要な部屋のみ稼働させるのが一般的です。一方全館空調は家全体に向けて稼働するため、電気使用量が多くなる傾向にあります。そのため電気代が高くなって失敗したという事例も少なくありません。さらに近年ではウクライナ情勢によって、日本でもエネルギー不足が懸念され、電気料金が高額となりつつあります。以前は月額1万円〜3万円程度で済んだ電気料金も2倍近い価格になったという事例も見受けられます。全館空調を取り入れる方は、月々の電気料金にも注意しなければいけません。
メンテナンス費用が掛かる
全館空調は毎年メンテナンスを行わなければならず、最低でも1年間で1度、定期点検とフィルター交換が必要となり、3万円〜4万円の支出が発生します。エアコンであれば、数年はメンテナンスがかからないうえ、費用も全館空調より安くなるため、メンテナンス費用が高くなったという後悔例が挙げられます。さらにエアコンであればある程度自分で掃除することが可能ですが、全館空調となると床下や天井などさまざまな箇所に設置されているため、自身で行うのは現実的ではありません。専門業者に依頼することになるので、高いメンテナンス費用を支払うことになります。
修理費用が高い
全館空調の修理費用が高くて失敗したという意見も挙げられます。万が一全館空調が故障してしまった場合、数10万円〜300万円程度の修理費用がかかります。もちろん故障範囲や故障内容によって小さな部品を交換するだけで完了する場合もありますが、全体的に交換が必要となった場合は高い金額になります。エアコンの交換となれば、商品によるものの10万円前後の費用で済むため、比較しても修理費用が高いです。
乾燥しやすい
常に全館空調を稼働させていると、湿度が低下し乾燥している家になったという失敗例です。空調を常に動かしていると、自然に室内の湿度が低くなるため、加湿器は必須です。梅雨の時期などには向いている全館空調ですが、冬場は特に乾燥するため、肌が弱い人は家の中でも保湿剤を塗っているという方もいらっしゃいます。また寝て起きたら「口呼吸のせいでのどが痛い」「乾燥によって鼻血が出た」という方もいらっしゃるため、常にさまざまな箇所に加湿器が必要となります。
稼働音が気になる
全館空調の稼働音が聞こえてきて寝付けないという方もいらっしゃいます。近年の全館空調の高性能であるとはいえ、多少は稼働音が発生します。特に神経質な方にとっては睡眠の妨げになることでしょう。稼働音を抑えるためには寝室などに機械を設置しないなどの対応が必要となります。
全館空調はやめたほうがいい?メリットは?
全館空調はやめた方がいいという意見を紹介しましたが、メリットもあります。ここでは5つ紹介します。
温度調整する手間がない
全館空調は温度調整する手間がなく、一年中快適な温度を維持してくれます。エアコンの場合はオンオフや室内の温度に合わせて調節しますが、全館空調は一定温度を維持することができます。さらに冬場の廊下は寒いということもなくなるため、寒い時期であっても快適に過ごすことが可能となります。
換気する必要がない
全館空調は換気を計画的に行ってくれるため、自身で換気する必要がなくなります。時に夏場や冬場などの時期は窓を開けたくない方も多いですが、全館空調であれば外の気温に関係なく換気を行ってくれます。また高性能フィルターを使った花粉が除去できる機能をつけることもできるため、花粉症の方は特に安心して過ごすことができます。
ヒートショックの防止
全館空調にすることで温度を室内の温度が均一となるため、「ヒートショック」の防止につながります。ヒートショックとは10度以上の温度差がある場所へ移動すると心臓や血管に異常が生じ、心筋梗塞や脳卒中などの病気に陥る現象です。特に冬場などはお風呂から上がった後に廊下などの寒い場所に行くと、温度差によってヒートショックが発生する可能性が高まります。高齢者の方にみられる現象ですが、全館空調にすれば、温度差を失くし、未然に防ぐことができるメリットがあります。
結露が発生しにくくなる
全館空調では定期的な換気を行ってくれるため、結露が発生しにくくなるメリットが挙げられます。近年の住宅は高気密な構造が多いものの、エアコンによって結露が生まれる可能性も0ではありません。しかし全館空調は常に空気の循環を行っているため結露の発生を最小限にすることが可能です。
他の家電が不要となる
全館空調の家にすることで、冬場であればヒーターやストーブ、夏場は扇風機などが不要となるメリットがあります。他の家電を購入しなくて済むため、コストの削減だけでなく、部屋をスッキリさせることも可能です。
ペットも快適に過ごせる
ペットを飼っている方は常に家の中の温度管理を行わなければいけません。特に夏場や冬場の気温はペットの生命にもかかわるため、常に快適な温度を維持する必要があります。全館空調にすれば温度が均一となるため、ペットも快適に過ごすことができるでしょう。
空間がすっきりする
各部屋にエアコンの設置が不要となるうえ、室外機を外に置く必要がなくなるため、建物の見栄えが良くなるメリットがあります。一般的に建物外周やベランダに室外機を設置しますが、エアコンの数に応じた室外機が必要となるため、せっかくのマイホームの見栄えが悪くなります。一方全館空調であれば種類によるものの室外機1台だけで済ませることができるため、住宅の見栄え低下にはつながりにくい特徴があります。以下の4つは室外機の種類となりますが、室外機の場所や設置についてまとめております。
● 天井吹き出し型・・・室外機の露出はない
● 床下冷暖房型 ・・・床下に収めるため露出がない
● 壁パネル輻射型・・・パネル設置場所の検討が必要となる
● 壁掛けエアコン型・・・室外機の設置は必要。複数の室外機になることもある
4つの種類に関しては後ほど詳しく紹介します。
全館空調はやめたほうがいい?デメリットは?
もちろん全館空調はメリットだけではありません。デメリットもあります。やめたほうがいいという理由でも紹介しましたが、ここでは5つのデメリットを紹介します。
初期費用が高い
全館空調の初期費用は150万円近い価格になります。もちろん導入する機器の性能や規模によって異なるため一概には言えません。しかしエアコン1台15万円と比較すると、高額な費用と言えるでしょう。そのため、初期費用が高いがゆえに、建築予算をオーバーすることにもなりかねないため、事前に予算組みしてから取り入れるか検討する必要があります。
ランニングコストが高い
月々の電気代に加え、メンテナンス費用などランニングコストが高いというデメリットが挙げられます。全館空調を稼働させている以上、高い電気代を支払い続けることになるうえ、メンテナンスは必須となります。そのため支出額が嵩むというデメリットを理解しておく必要があります。
使わなくなったという意見も
電気代が高額であることからエアコンに切り替えた方もいらっしゃいます。使いたいときに使えるエアコンの方が可動性が良いため、全館空調を使わなくなったという意見もあります。すなわち数百万円かけて設置した設備が無駄になったということです。もちろんそういうご家庭もあるということで、どなたも使用しなくなるわけではありませんが、エアコンの方が使い勝手がよかったというケースもあります。
部屋ごとの温度調整が難しい
エアコンであれば、1台ごとに温度調整することができますが、全館空調は一定範囲の温度調整を整える性能があります。近年では部屋ごとの温度調整をすることも可能となりましたが、それでも多少の調節しかできないデメリットがあります。体感温度は人によって異なるため、全部屋同じ温度を寒いと感じる方もいらっしゃれば、暑いと感じる人もいるため、温度調節が難しいというデメリットが挙げられます。
一つ故障すると全空調が操作できなくなることも
全館空調は一か所故障すると全部屋への空調設備が行き届かなくなるデメリットがあります。故障個所にもよりますが、一番重要な動力源が故障すると各部屋へ冷暖気を送ることもできなければ換気設備も動かなくなります。そのため夏場や冬場の故障は生活にも大きな影響を及ぼすことでしょう。一方エアコンなどの場合は1台ごとに動力が分かれているため、上記のような問題は発生しませんが、全館空調は全て一つのシステムとして稼働しているため、どこか破損すると家全体へのダメージも大きくなります。
全館空調の初期費用
そもそも全館空調の初期費用はどれくらいの価格なのでしょうか。
おおよそ100万円~300万円の間
全館空調の導入費用は平均すると150万円前後となりますが、製品によっては100万円前後で設置できるものもあれば、300万円近い価格の製品もあります。家のサイズが大きくなるほど各部屋に設置する機器も増えるため、コストが割高になる特徴があります。
建築会社によって価格が違う
全館空調の初期費用は建築会社によっても異なります。大手のハウスメーカーになると、独自の全館空調を導入している一方で、利益が多く乗せられ割高になる傾向にあります。一方工務店などは設備メーカーの製品を取り付け、利益率も低いことが多いので、価格にも違いが生じます。ハウスメーカー独自の全館空調となると、修理なども建築したメーカーに依頼しなければいけません。その結果高いメンテナンス費用になる可能性もあるため注意しましょう。
全館空調の種類
全館空調の価格に差額があるのは、施工範囲の広さだけでなく、種類によっても価格が異なる為です。全館空調は以下の4つ種類が挙げられます。
1. 天井吹き出し型
天井に吹き出し口を設置し、ダクトを経由して家全体に冷暖気を送り届ける方法です。吹き出し口のルーバーを調整し、風の向きや室温などを操作することができます。暑い日は冷風を送り届けることが可能なため、家族全員快適に過ごすことが可能です。ただしコストは4つの中で最も高額です。
2. 床下冷暖房型
床下に室内機と分配ボックスを設置し、床からの輻射熱とガラリ(通気口)による送風で家全体へ空気を送り届ける仕組みです。天井吹き出し型より風力は低く、ゆっくりじんわりと暖める全館空調です。価格に関しては4つの中では中央くらいとなります。
3. 壁パネル輻射型
壁に設置した大型冷暖房パネルから冷暖気を家全体に届ける仕組みです。無音で運転を行うため稼働音が気になることもなくなります。さらに無風であるためホコリが舞うこともなく生活しやすくなります。ただし設置機器によっては天井吹き出し型と同額ほどのコストが必要となるケースも多いです。
4. 壁掛けエアコン型
壁に掛けたエアコン1台で各部屋へ冷暖気を届ける仕組みです。ダクトを経由して各部屋へ届けてくれます。4つの中では最もコストが安いとされています。
全館空調の導入を後悔しないためのポイント
では全館空調の導入を後悔しないためにはどのような点に注意すべきなのでしょうか。ここでは3つのポイントを解説します。
寿命を理解しておく
全館空調の寿命は10年〜15年前後と言われており、大規模な修理が必要となる可能性があることを理解しておきましょう。もちろん20年や25年持つケースも考えられますが、事前に修理するものだと仮定し、費用を用意しておくことが大切です。一方エアコンの寿命は10年前後と言われており、修理費用も全館空調と比べると格安です。トータルの費用では圧倒的に全館空調の方が高くなるため、その点を理解してから設置すべきか考慮しましょう。
毎月の支出額を計算する
全館空調は電気代だけでなくメンテナンス費用なども発生するため、他の支出と合算して年間でいくら必要なのかを考慮しておくことが大切です。住宅を建築する方の多くは住宅ローンを借入し、毎月返済していかなければいけません。その他固定資産税や都市計画税などもかかります。また水道代やガス代などの他に生活費なども含めると、月々の支出額は非常に大きくなります。全館空調を導入するとなると年に1回のメンテナンスが必要となり、電気代も高くなることから、より支出額が増加します。自身の所得でも十分に支払うことができるのかを確認しておくと良いでしょう。一方で支出額を把握していないと、毎月節約生活になったり、趣味にお金を使えない状態にもなりかねません。そのため今の生活費をベースにローンの返済額なども考慮しておくと、全館空調を導入しても後悔しないか判断することが可能です。
ラングコストを比較する
何度もお伝えしている通り、全館空調のランニングコストはエアコンと比較すると高くなる傾向にあります。そのためどれくらい高くなるのか気になる方も多いのではないでしょうか。次の項では全館空調の電気代について紹介するため、導入を検討している方は比較してみましょう。
全館空調と電気代について
ネットで「全館空調 電気代」と調べると、ほどんどが「高すぎる」という意見が見受けられます。ではどれくらい高いのでしょうか。ここでは全館空調の電気代について紹介します。
一般家庭の平均電気代はどれくらい
家計調査/家計収支編 二人以上の世帯|e-statを確認すると、一般家庭の電気代は平均して1万5,000円〜2万円前後と分かります。もちろん各家庭によって電気使用量が異なるため、高くなる場合もあれば安くなる場合もあります。昨今ではエネルギー不足によって電気代が高騰しており、月10万円近い価格になったという事例もあります。そのため平均の電気代といっても家庭によって大きく異なるのが実状です。
全館空調の電気代は
全館空調換気システムの電気代 ランニングコスト 協立エアテック (kankimaru.com)のデータを確認すると、全館空調の電気代はおおよそ月8,000円前後です。自宅のエアコン4台分を1日18時間稼働させた場合は月1万3,000円前後です。しかし実際4台稼働させるという家庭は少なく、おおよそ2台が平均です。そのため価格を按分すると6,500円となるため、全館空調の方が多少割高になります。とはいえ先程もお伝えした通り、電気代が高騰していることから上記の価格は参考程度であり、実際はもっと高い価格であると言えます。ただし、エアコンより全館空調の方が多少高くなることに変わりはないでしょう。
全館空調導入を検討する際の家づくりの注意点
全館空調を導入する際は以下の3つの点に注意しましょう。
本当に必要なのかを確認する
全館空調が本当に必要なのかを確認しましょう。初期費用だけでなく、ランニングコストもかかるため、決して安い価格ではありません。しかし近年人気があるからという理由で導入される方も多いですが、実際使わないという意見もあります。そもそも高齢者がいない住宅であれば、ヒートショックが起こる可能性が低く、なおかつある程度の温度差であれば耐えられるかもしれません。また暑い地域や寒い地域などでは全館空調の需要が高いですが、平均気温の地域であれば不要となるかもしれないでしょう。そのため本当に必要であるかを慎重に検討してください。
性能の比較をする
近年のエアコンは高性能な製品が多く、省エネ性能が高く、電気代を抑えることができます。とはいえ全館空調とコストを比較するだけでなく、性能の比較をしてみましょう。全館空調は設備会社のショールームなどで機能を確認することができます。本記事で紹介したメリット以外にもさまざまな性能の良さやコスト面を紹介してくれるでしょう。一度足を運んでみてから検討してみましょう。
建築会社の意見を参考にする
全館空調の導入で悩んでいる方は、建築会社の方に相談してみましょう。建築会社は数多くの全館空調の住宅を建築してきた実績があるとともに、お客様からの意見をヒアリングしています。「実際導入してみてどうだったか」「電気代は高く感じるか」など生の声を教えてもらうため、導入すべきか検討する材料になるでしょう。また全館空調に関するノウハウや豆知識なども教えてもらうことが可能です。ただし全館空調を取り扱っていない建築会社もあるため、相談する会社はしっかり決めるようにしておきましょう。
まとめ:全館空調はやめたほうがいい?
今回は、全館空調がやめたほうがいいと言われる5つの理由とメリット・デメリット、注意点などを紹介しました。全館空調は電気代が高いといわれておりますが、実際はエアコン2台稼働させた場合は1,500円ほどの差額です。年間でも1万8,000円前後であるため、決して高すぎるとは言えないでしょう。とはいえ昨今電気代が高騰していることから、より高い電気代になる可能性もありますし、メンテナンスの費用を考えるとより差が出ることもあります。そのため建築会社や設備会社へ相談し、実情を確認してから導入しても良いです。ただし導入するにあたって本当に必要なのかも大切です。結果使わなかったという事例もあるため、導入すべきか慎重に検討することをおすすめします。
サティスホーム本社営業部長:小林大将
2級建築士と宅地建物取引士の資格を取得後、サティスホームで現場監督を10年経験。携わらせて頂いたお客様は200棟以上。その後、本社営業部長としてお客様の家づくりをお手伝いさせて頂いてます。